【第2章】第5節 労働衛生教育
1. 労働者に対する教育の重要性
労働者を高温多湿作業場所において作業に従事させる場合には、適切な作業管理、労働者自身による健康管理等が重要であることから、労働者への教育は極めて重要です。
2. 教育内容
作業を管理する者及び労働者に対して、あらかじめ次の事項について労働衛生教育を行ってください。
- 熱中症の症状
- 熱中症の予防方法
- 緊急時の救急処置
- 熱中症の事例
なお、2.の事項には、前述の熱中症予防対策が含まれます。
平成21年6月19日付け基発第0619001号による熱中症の教育内容
事項 | ● 管 理 者 |
▲ 作 業 者 |
範囲 |
---|---|---|---|
熱中症の症状 | ● | ▲ | 熱中症の概要 |
● | ▲ | 職場における熱中症の特徴 | |
● | ▲ | 体温の調節 | |
● | ▲ | 体液の調節 | |
● | ▲ | 熱中症が発生する仕組みと症状 | |
熱中症の予防方法 | ● | ▲ | WBGT値(意味) |
● | WBGT値(基準値に基づく評価) | ||
● | 作業環境管理(WBGT値の低減、休憩場所の整備等) | ||
● | 作業管理(作業時間の短縮、熱への順化、水分及び塩分の摂取、服装、作業中の巡視等) | ||
● | 健康管理(健康診断結果に基づく対応、日常の健康管理、労働者の健康状態の確認、身体の状況の確認等) | ||
▲ | 現場での熱中症予防活動(熱への順化、水分及び塩分の摂取、服装、日常の健康管理等) | ||
● | 労働衛生教育(労働者に対する教育の重要性、教育内容及び教育方法) | ||
● | ▲ | 熱中症予防対策事例 | |
緊急時の救急措置 | ● | 緊急連絡網の作成及び周知 | |
● | ▲ | 緊急時の救急措置 | |
熱中症の事例 | ● | ▲ | 熱中症の災害事例 |
3. 教育方法
(1) 安全教育の3種類の教育
3種類の教育:安全教育は知識教育、技能教育、態度教育からの三つの教育から構成されています。
安全教育の知識教育では不安全・不衛生の内容を教育します。何が危険源で、どのようなリスクで労働災害が発生し、その結果、どのような怪我や疾病が発生するかを教えます。
安全教育の技能教育ではどのように危険を回避するかの具体的な労災防止方法や手順を教えます。安全教育の態度教育では、なぜ、安全行動をしないといけないのか、また、行動しないとどのような労働災害になるかを理解させ、安全行動を実行しようとする意欲をつけさせます。
(2) 安全衛生教育の3段階の教育
安全教育の目的は、作業者に正しく確実に継続的に安全行動をさせることです。しかし、多くの安全教育では、法令コンプライアンスを満たすために、教育を実施したという証拠が目的になってしまい、作業者の理解度やその実効性を無視しているケースがあります。
そのため安全衛生教育は計画、実行、評価の三つのステップを踏んで実行されます。
計画とはリスクが発生する前に安全衛生行動を作業者に教える、あるいは発生してしまった事故が再発しないように準備、実行、確認する計画を作っておき準備することです。
実行とは作業者が安全行動できるように教育を進めることです。ここでの実行とは、ただ単純に一方的に教育をしたと言う証拠作りではなく、行動できるように教えるという実りのある教育を指します。作業者の理解のレベルに合わせて教育を進めていきます。理解していないのであれば、そこでは時間をかけて、理解するまで繰り返します。
評価とは作業者が教育内容について本当に理解し、行動できるレベルまで達しているかの確認、さらに教えられたことを職場で本当に実行しているかの確認です。教育しても理解していない、あるいは、教育しても実行されていない例が多く見られます。 そこで教育終了後確認テストを実施し、所定の点数に達していない者はその現場には入れませんし、その仕事を担当することはできません。そこで、所定の点数に達するまで繰り返し教育を行います。
さらに、テストで合格点を取っても、現場で実行するとは限りません。管理監督者は必ず職場を巡視して教育内容が実行されているかどうかを確認します。確認する回数は1回だけでなく、教育直後、1週間後、1か月後、3か月など、ランダムに何度も確認しましょう。
【理解の確認と討議】
【理解の確認】
- WBGT値、熱順化、自発的脱水とは何か。
- 熱中症を注意すべき病気、作業者の特徴、作業者の体調。
- 熱中症が発生しやすい職場の特徴。
【討議】
- 自分たちの職場の作業環境、作業内容をふり返り、作業強度(代謝率のレベル)、服装の状態、作業者の順化の状態などから職場で許容できるWBGT値は何℃であるかを話し合ってください。
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