【第7章】第1節 熱中症に関連する法令
熱中症に関しては、プレス作業、有機溶剤、特別化学物質などの危険有害作業にあるような労働安全衛生法や政令、省令での包括的な法的規制はありません。しかし、暑熱の危険に関しては、様々な法令の中で危険と労災防止策が述べられています。
1. 専属の産業医の選任(労働安全衛生規則13条の3)
常時千人以上の労働者を使用する事業場又は次に掲げる業務に常時五百人以上の労働者を従事させる事業場にあっては、その事業場に専属の産業医を選任すること。
- 多量の高熱物体(100℃以上の鉱物等)を取り扱う業務及び著しく暑熱(乾球温度40℃、湿球温度32.5度、黒球温度50℃以上)な場所における業務
2. 作業環境測定を行うべき作業場 (労働安全衛生規則587条)
第五百八十七条 令第二十一条第二号の厚生労働省令で定める暑熱、寒冷又は多湿の屋内作業場は、次のとおりとする。
- 一 溶鉱炉、平炉、転炉又は電気炉により鉱物又は金属を製錬し、又は精錬する業務を行なう屋内作業場
- 二 キユポラ、るつぼ等により鉱物、金属又はガラスを溶解する業務を行なう屋内作業場
- 三 焼純炉、均熱炉、焼入炉、加熱炉等により鉱物、金属又はガラスを加熱する業務を行なう屋内作業場
- 四 陶磁器、レンガ等を焼成する業務を行なう屋内作業場
- 五 鉱物の焙(ばい)焼、又は焼結の業務を行なう屋内作業場
- 六 加熱された金属の運搬又は圧延、鍛造、焼入、伸線等の加工の業務を行なう屋内作業場
- 七 溶融金属の運搬又は鋳込みの業務を行なう屋内作業場
- 八 溶融ガラスからガラス製品を成型する業務を行なう屋内作業場
- 九 加硫がまによりゴムを加硫する業務を行なう屋内作業場
- 十 熱源を用いる乾燥室により物を乾燥する業務を行なう屋内作業場
- 十一 多量の液体空気、ドライアイス等を取り扱う業務を行なう屋内作業場
- 十二 冷蔵庫、製氷庫、貯氷庫又は冷凍庫等で、労働者がその内部で作業を行なうもの
- 十三 多量の蒸気を使用する染色槽(そう)により染色する業務を行なう屋内作業場
- 十四 多量の蒸気を使用する金属又は非金属の洗浄又はめつきの業務を行なう屋内作業場
- 十五 紡績又は織布の業務を行なう屋内作業場で、給湿を行なうもの
- 十六 前各号に掲げるもののほか、厚生労働大臣が定める屋内作業場
3. 温度及び湿度(労働安全衛生規則606条~612条)
(温湿度調節)
第六百六条 事業者は、暑熱、寒冷又は多湿の屋内作業場で、有害のおそれがあるものについては、冷房、 暖房、通風等適当な温湿度調節の措置を講じなければならない。
(気温、湿度等の測定)
第六百七条 事業者は、第五百八十七条に規定する暑熱、寒冷又は多湿の屋内作業場について、半月以内ごとに一回、定期に当該屋内作業場における気温、湿度及びふく射熱(ふく射熱については、同条第一号から第八号までの屋内作業場に限る。)を測定しなければならない。
2 第五百九十条第二項の規定は、前項の規定による測定を行った場合について準用する。
(ふく射熱からの保護)
第六百八条 事業者は、屋内作業場に多量の熱を放散する溶融炉等があるときは、加熱された空気を直接屋外に排出し、又はその放射するふく射熱から労働者を保護する措置を講じなければならない。
(加熱された炉の修理)
第六百九条 事業者は、加熱された炉の修理に際しては、適当に冷却した後でなければ、労働者をその内部に入らせてはならない。
(給湿)
第六百十条 事業者は、作業の性質上給湿を行なうときは、有害にならない限度においてこれを行ない、 かつ、噴霧には清浄な水を用いなければならない。
(坑内の気温)
第六百十一条 事業者は、坑内における気温を三十七度以下としなければならない。ただし、高温による健康障害を防止するため必要な措置を講じて人命救助又は危害防止に関する作業をさせるときは、この限りでない。
(坑内の気温測定等)
第六百十二条 事業者は、第五百八十九条第二号の坑内の作業場について、半月以内ごとに一回、定期に当該作業場における気温を測定しなければならない。
2 第五百九十条第二項の規定は、前項の規定による測定を行った場合について準用する。
4. 事務室の環境管理(事務所衛生基準規則 第1条-第12条)
(温度)
第四条 事業者は、室の温度が十度以下の場合は、暖房する等適当な温度調節の措置を講じなければならない。
2 事業者は、室を冷房する場合は、当該室の気温を外気温より著しく低くしてはならない。ただし、電子計算機等を設置する室において、その作業者に保温のための衣類等を着用させた場合は、この限りでない。
(空気調和設備等による調整)
第五条 事業者は、空気調和設備(空気を浄化し、その温度、湿度及び流量を調節して供給することができる設備をいう。以下同じ。)又は機械換気設備(空気を浄化し、その流量を調節して供給することができる設備をいう。以下同じ。)を設けている場合は、室に供給される空気が、次の各号に適合するように、当該設備を調整しなければならない。
2 事業者は、前項の設備により室に流入する空気が、特定の労働者に直接、継続して及ばないようにし、 かつ、室の気流を〇・五メートル毎秒以下としなければならない。
3 事業者は、空気調和設備を設けている場合は、室の気温が十七度以上二十八度以下及び相対湿度が四十パーセント以上七十パーセント以下になるように努めなければならない。
(作業環境測定等)
第七条 事業者は、労働安全衛生法施行令(昭和四十七年政令第三百十八号)第二十一条第五号の室について、二月以内ごとに一回、定期に、次の事項を測定しなければならない。
ただし、当該測定を行おうとする日の属する年の前年一年間において、当該室の気温が十七度以上二十八度以下及び相対湿度が四十パーセント以上七十パーセント以下である状況が継続し、かつ、当該測定を行おうとする日の属する一年間において、引き続き当該状況が継続しないおそれがない場合には、第二号及び第三号に掲げる事項については、三月から五月までの期間又は九月から十一月までの期間、六月から八月までの期間及び十二月から二月までの期間ごとに一回の測定とすることができる。
- 一 一酸化炭素及び二酸化炭素の含有率
- 二 室温及び外気温
- 三 相対湿度
2 事業者は、前項の規定による測定を行なつたときは、そのつど、次の事項を記録して、これを三年間 保存しなければならない。
- 一 測定日時
- 二 測定方法
- 三 測定箇所
- 四 測定条件
- 五 測定結果
- 六 測定を実施した者の氏名
- 七 測定結果に基づいて改善措置を講じたときは、当該措置の概要
5. 立入禁止等 (労働安全衛生規則 第585条)
第五百八十五条 事業者は、次の場所には、関係者以外の者が立ち入ることを禁止し、かつ、その旨を見やすい箇所に表示しなければならない。
- 一 多量の高熱物体を取り扱う場所又は著しく暑熱な場所
2 労働者は、前項の規定により立入りを禁止された場所には、みだりに立ち入つてはならない
6. 呼吸用保護具等 (労働安全衛生規則 第593・596条)
第五百九十三条 事業者は、著しく暑熱又は寒冷な場所における業務、多量の高熱物体、低温物体又は有 害物を取り扱う業務、有害な光線にさらされる業務、ガス、蒸気又は粉じんを発散する有害な場所における業務、病原体による汚染のおそれの著しい業務その他有害な業務においては、当該業務に従事する労働者に使用させるために、保護衣、保護眼鏡、呼吸用保護具等適切な保護具を備えなければならない
(保護具の数等)
第五百九十六条 事業者は、前三条に規定する保護具については、同時に就業する労働者の人数と同数以上を備え、常時有効かつ清潔に保持しなければならない。
7. 有害作業場の休憩設備(労働安全衛生規則 第614条)
(有害作業場の休憩設備)
第六百十四条 事業者は、著しく暑熱、寒冷又は多湿の作業場、有害なガス、蒸気又は粉じんを発散する作業場その他有害な作業場においては、作業場外に休憩の設備を設けなければならない。ただし、坑内等特殊な作業場でこれによることができないやむを得ない事由があるときは、この限りでない。
8. 発汗作業に関する措置 (労働安全衛生規則 第617条)
(発汗作業に関する措置)
第六百十七条 事業者は、多量の発汗を伴う作業場においては、労働者に与えるために、塩及び飲料水を備えなければならない。
9. 特定業務従事者の健康診断 (労働安全衛生規則 第45条)
(特定業務従事者の健康診断)
第四十五条 事業者は、第十三条第一項第二号に掲げる業務(多量の高熱物体を取り扱う業務及び著しく暑熱な場所における業務)に常時従事する労働者に対し、当該業務への配置替えの際及び六月以内ごとに一回、定期に、第四十四条第一項各号に掲げる項目について医師による健康診断を行わなければならない。
10. 労働時間延長の制限業務 (労働基準規則第18条)
労働基準規則 第18条 労働基準法36条第1項ただし書の規定による労働時間の延長が2時間を越えてはならない業務は、次のものとする。
- 多量の高熱物体を取り扱う業務及び著しく暑熱な場所における業務
11. 年少者の就業制限の業務の範囲 (年少則第8条)
年少則第8条 法第62条第1項の厚生労働省令で定める危険な業務及び同条第2項の規定により満18歳に満たない者を就かせてはならない業務は、次の各号に掲げるものとする。
36 多量の高熱物体を取り扱う業務及び著しく暑熱な場所における業務
12. 女性の危険有害業務の就業制限の範囲等 (女性則第2条)
第二条 法第六十四条の三第一項の規定により妊娠中の女性を就かせてはならない業務は、次のとおりとする。
十九 多量の高熱物体を取り扱う業務
二十 著しく暑熱な場所における業務
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