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第2章 丸のこ等を使用する作業に関する知識②

1.作業計画の作成等

(5)作業環境の整備

安心して作業を行うには作業に適した広さと作業に適した明るさが必要です。


■適切な作業場所の確保

①正しい作業姿勢がとれる高さ、広さを確保します。
狭い場所はそれだけで危険だという事になります。

②切断部材を安定して置ける広さが必要です。
切断中に部材が壁等に当たるとキックバックの原因になります。

③作業中に躓かないように足元の片づけを行います。

④高所作業場所では広い作業床があり、墜落の恐れがない個所で作業を行います。墜落する恐れのある場所では使用は控えましょう。

※墜落制止用器具が必要な個所での作業は好ましくありません。

■明るさの確保

労働安全衛生規則では必要な明るさを確保することになっています。具体的な数値(ルクス)は示されていません。ランプ付きの丸のこも販売されていますが作業計画を立てる時には投光器などの事前準備を忘れないようにします。

■整理・整頓・清掃は安全管理、清潔は衛生管理

作業場所は常に4S(整理・整頓・清掃・清潔)を心がけます。

①整理

「整理」は、必要なものと不要なものを区分し、不要、不急なものを取り除くことです。要るもの、要らないものに分けるためには、何らかの判断の基準が必要になります。現場の作業方法では必要と認められていても、その場所にその物が必要か、それだけの量が必要かなどの改善の余地はないかを検討し、よりよい方法が見つかればそれを新しい判断の基準、すなわち作業標準として定めてゆくことが出来ます。

②整頓

「整頓」は、必要なものを、決められた場所に、決められた量だけ、いつでも使える状態に、容易に取り出せるようにしておくことです。工具・用具のみならず資材・材料を探す無駄を無くすことが出来ます。安全に配慮した置き方をすることが大事です。

③清掃

「清掃」は、ゴミ、ほこり、かす、くずを取り除き、油や溶剤など隅々まできれいに清掃し、仕事をやりやすく、問題点が分かるようにすることです。転倒などの災害を防ぐことも大事なことです。機械設備にゴミやかすが付着していると製品に影響が出たり機械に不具合が発生することも懸念されます。

④清潔

「清潔」は、職場や機械、用具などのゴミや汚れをきれいに取って清掃した状態を続けることと、そして作業者自身も身体、服装、身の回りを汚れの無い状態にしておくことです。

4Sとは、職場の仕事に、必要なものだけが置かれ、必要なものがいつも同じ場所にあり、必要なものが汚れのない状態であり、いつ見ても職場がその状態であって作業者の身体や服装がきれいであるかという状態にあるようにする活動のことなのです。
4S活動は、職場を単にきれいにするという表面的なことでは無く、職場の安全と作業者の健康を守り、そして生産性を向上させる教育プログラムであって、この好ましい状態を維持することなのです。
※整理・整頓・清掃は安全管理、清潔は衛生管理とも考えます。

■落下物対策での上下作業禁止

事業者は、作業のため物体が落下することにより、労働者に危険を及ぼすおそれのあるときは、防網の設備を設け、立入区域を設定する等当該危険を防止するための措置を講じなければならない。
高所で丸のこを使用する場合、切断部材や丸のこを落としてしまう恐れがあるときは防網を張ったり、あるいは下方を立ち入り禁止措置とします。

■異常時の措置

作業中に異常を感じた時は直ちに作業を中止し、職長等に報告します。
異常は音、振動、ニオイで感じ取ります。
丸のこ本体以外の異常は職長等又は元請け工事担当者等に報告し指示を待ちましょう。いずれにしても作業は中断してください。

■悪天候等の措置

日頃から大雨や強風等に対する防災対策を検討し、労働者の安全を確保してください。労働安全衛生法では、強風、大雨、大雪等の悪天候時の作業の中止など以下のことが、定められていますので、その徹底を図ってください。

・強風とは10分間の平均風速が毎秒10m以上の風
・大雨とは1回の降雨量が50㎜以上の降雨(時間に関係なく)
・大雪とは1回の降雪量が25㎝以上の積雪

実際にこれらの悪天候となった場合のほか、気象注意報等が発せられ、悪天候となることが予想される場合を含みます。

強風、大雨、大雪等の悪天候のため危険が予想されるときに作業中止等をしなければならない作業とは(一部抜粋)
 〇高さが2m以上の箇所で行う作業
 〇軒高さが5m以上の木造建築物の構造部材の組立て又はこれに伴う屋根下地
 若しくは外壁下地の取付けの作業
 〇型わく支保工の組立て又は解体の作業など

【悪天候時の丸のこ作業】

強風時:墜落・転落、飛来・落下物

屋外作業で特に高所にいる場合は風にあおられて墜落する恐れがあります。墜落制止用器具を使用していても危険なので作業は中止しましょう。
切断物等が飛散、落下する恐れもあります。

大雨時:感電、転倒、切れ擦れ(小雨含み)

丸のこや、電工ドラムが濡れると絶縁不良から漏電、感電の恐れがあります。
また、足元が滑り転倒したり、切断部材が濡れて水分を多く含むと切断時に抵抗が増えキックバックを起こす可能性が高くなります。

■夏期高温時の対応

「熱中症」は、高温多湿な環境下において、体内の水分及び塩分(ナトリウムなど)のバランスが崩れたり、体内の調整機能が破綻するなどして発症する障害の総称です。
その症状は、めまい・失神、筋肉痛・筋肉の硬直、大量の発汗、頭痛・気分の不快・吐き気・嘔吐・倦怠感・虚脱感、意識障害・痙攣・手足の運動障害、高体温等が現れます。気温の高い夏季に熱中症が多く発生しており、職場における熱中症による死亡災害者数は毎年20名前後に及んでいます。


熱中症の起こり方

熱中症の起こり方

熱拡散には、体から直接熱が外気に逃げる放射や伝導、対流などがあります。しかし、外気温が高くなると熱が逃げにくくなります。一方、汗は蒸発する時に体から熱を奪います。高温時は熱拡散が小さくなり、汗の蒸発による気化熱が体温を下げる働きをしています。汗を高温、多湿、風が弱い輻射源(熱を発生するもの)があるなどの環境では、体から外気への熱放散が減少し、汗の蒸発も不十分となり、熱中症が発生しやすくなります。


体温調節反応と熱中症の病態

体温調節反応と熱中症の病態

熱中症の発症には、からだ(体調、性別、年齢、暑熱順化の程度など)と環境(気温、湿度、輻射熱、気流など)及び行動(活動強度、持続時間、休憩など)の条件が複雑に関係します。

「暑熱環境にさらされた」という条件での体調不良はすべて熱中症の可能性があります。熱失神は「立ちくらみ」、熱けいれんは全身けいれんではなく「筋肉のこむらがえり」です。熱疲労は、全身の倦怠感や脱力、頭痛、吐き気、嘔吐、下痢などが見られる状態です。
また、熱中症の重症度を「具体的な治療の必要性」の観点から、Ⅰ度(現場での応急処置で対応できる軽症)、Ⅱ度(病院への搬送を必要とする中等症)、Ⅲ度(入院して集中治療の必要がある重症)に分類しました。


熱中症の症状と重症度分類

熱中症の症状と重症度分類

過去5年間(平成23~27年)の業種別の熱中症による死傷者をみると、建設業が最も多く、次いで製造業で多く発生しており、全体の約5割がこれらの業種で発生しています。
熱中症は6月から9月にかけて多く発生し、死亡災害では7月と8月に多く発生しています。発生時刻は、午後2時台から午後4時台までに多発しているが、朝9時台の作業開始後からも発生しており、必ずしも日中に限らず、朝・夕刻でも発生しているので注意が必要です。


熱中症による死傷者数(月別件)と熱中症による死傷者数(時間帯別)

熱中症による死傷者数(月別件)と熱中症による死傷者数(時間帯別)

暑さ指数(WBGT値)の計測と周知

現場の気象状況(暑さ指数:WBGT値)を把握することや、熱中症予防情報メールサービスやスマートフォン用アプリを活用しましょう。


暑さ指数(WBGT値)の低減

大型扇風機やドライミスト、遮光ネットなどを活用して、低減を図ります。


休憩場所の整備など

作業現場の環境改善のほか、下記のような労働者の休憩場所の整備を行います。

〇作業場所の近隣に冷房やシャワー等、身体を適度に冷やすことのできる設備を設置

〇冷蔵庫や製氷機の備品の設置、経口保水液等効果的な飲料水を常備


作業時間の短縮など

作業休止時間や休憩時間を確保し、高温多湿作業場所での作業を連続して行う時間を短縮するなどの熱中症予防対策を行います。

◯休憩時間の確保

作業員の休憩時間を通常期より長く確保など

◯携帯型WBGT値計測器を現場職長が携帯し、測定値が厳重警戒値に達した場合は作業を休止し休憩

◯出勤時刻の前倒し(早出・早帰り)

◯新規雇用者等作業環境への順化ができていないものについては、作業時間や作業内容を配慮


水分・塩分の摂取

熱中症対策キットの常備、熱中飴・タブレット、経口保水液の常備と対策キットの設置場所の明示

自覚症状以上に脱水状態が進行していることもあるので、自覚症状の有無にかかわらず、作業前後の水分の摂取及び作業中の定期的な接種を指導することが大切です。
作業前後及び作業中に水分補給が行えるように、経口保水液を常備しましょう。


通気性の良い服装など

熱中症予防には、熱を吸収しやすい服装は避け、透湿性及び通気性の良い服装を着用することが望ましいとされています。しかし、建設現場では、安全衛生上から長袖の作業服やヘルメット、安全チョッキを着用するため、通気性が劣る服装となります。そのため、通気性を確保したヘルメットや作業服、熱を吸収しにくい安全チョッキなどが開発されています


現場における応急処置については、厚生労働省「職場における熱中症予防対策マニュアル」によると以下のとおりです。

①涼しい環境への避難

風通しのよい日陰や、できればクーラーが効いている室内などに避難させましょう。

②脱衣と冷却

・衣服を脱がせて、体から熱の放散を助けます。きついベルトやネクタイ、下着はゆるめて風通しを良くします。

・露出させた皮膚に水をかけて、うちわや扇風機などで扇ぐことにより体を冷やします。下着の上から水をかけても良いでしょう。

・氷のうなどがあれば、それを前頚部の両脇、腋窩部(脇の下)、鼠径部(大腿の付根の前面、股関節部)に当てて皮膚の直下をゆっくり流れている血液を冷やすことも有効です。

・深部体温で40℃を超えると全身けいれん(全身をひきつける)、血液凝固障害(血液が固まらない)など危険な症状も現れます。

・体温の冷却はできるだけ早く行う必要があります。重症者を救命できるかどうかは、いかに早く体温を下げることができるかにかかっています。

・救急車を要請したとしても、その到着前から冷却を開始することが求められます。

③水分・塩分の補給

・冷たい水を持たせて、自分で飲んでもらいます。
冷たい飲み物は胃の表面から体の熱を奪います。同時に脱水の補正も可能です。大量の発汗があった場合には汗で失われた塩分も適切に補える経口保水液やスポーツドリンクなどが最適です。食塩水(水1?に1~2gの食塩)も有効です。

・応答が明瞭で、意識がはっきりしているなら、口から冷やした水分をどんどん与えてください。

・「呼び掛けや刺激に対する反応がおかしい」、「応えない(意識障害がある)」時には誤って水分が気道に流れ込む可能性があります。また「吐き気を訴える」ないし「吐く」という症状は、すでに胃腸の動きが鈍っている証拠です。これらの場合には、経口で水分を入れるのは禁物で、病院での点滴が必要です。

④医療機関へ運ぶ

・自力で水分の摂取ができないときは、点滴で補う必要があるので、緊急で医療機関に搬送することが最優先の対処方法です。


■緊急時等の対応

万一、労災や事故が発生してしまった場合には、被災者の生命の安全が第一ですので、救出や病院へ搬送することを最優先で行います。

重傷等の場合には、当然ですが、救急車を呼びます。それと並行して、職長等や元請け所長、事業者(雇用会社)に連絡、報告します。慌てないように、事前に救出方法や連絡先等の打合せ、周知を行っておきます。

緊急時等の対応

 

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