【第一章】振動工具に関する知識
(1)対象となる振動工具
過去の症例等の研究などから厚生労働省により振動工具とされている工具は下表のとおりです。
振動工具一覧表
工具の種類 | 工具の名称 | |
---|---|---|
1 | チェーンソー | |
2 | ピストンによる打撃機構を有する工具 | さく岩機 チッピングハンマー リベッティングハンマー コーキングハンマー ハンドハンマー ベビーハンマー コンクリートブレーカー スケーリングハンマー サンドランマー ピックハンマー 多針タガネ オートケレン 電動ハンマー |
3 | 内燃機関を内蔵する工具(可搬式のもの) | エンジンカッター
ブッシュクリーナー (刈払い機) |
4 | 携帯用皮はぎ機等の回転工具 | 携帯用皮はぎ機
サンダー バイブレーションドリル |
5 | 携帯用タイタンパー等の振動体内蔵工具 | 携帯用タイタンパー
コンクリートバイブレーター |
6 | 携帯用研削盤、スイング研削盤、その他手で保持し、又は支えて操作する型式の研削盤(使用する研削といしの直径が150mmを超えるもの) | |
7 | 卓上用研削盤又は床上用研削盤(使用すると石の直径が150mmを超えるもの | |
8 | 締付工具 | インパクトレンチ |
9 | 往復動工具 | バイブレーションシャー
ジグソー |
※これらは通達等により適宜追加されています。
<S42.10.5 安発第8号>
・ チェーンソー(排気量40cc以上の内燃機関により駆動するチェーンソー)
<S49.1.28基発第45号,S50.10.20基発第608号 等>
・ さく岩機,チッピングハンマーなど
<H5.3.31 基発第203号,H12.2.16 基発第66号>
・ 刈払い機
(2)振動工具の例
(3)振動工具の選定基準と点検整備
使用する振動工具は、振動や騒音が出来る限り少なく軽量なものを選び、取扱説明書で示した時期及び方法により、定期的に点検・整備し常に最良の状態に保つ必要があります。
また、「振動工具管理責任者」を選任し、点検・整備状況を定期的に確認し、その状況を記録する必要があります。
①1から8まで(6を除く)に掲げる業務に用いられる工具を使用する際は、次の要件に適合しているものを選定すること。
ア.振動
(ア) 振動ができるだけ小さいものであること。
(イ) 使用に伴って作用点から発生する振動が、発生部分以外の部分へ伝達しにくいものであること。
(ウ) 次の要件に適合するハンドル又はレバー(以下「ハンドル等」という。)が取り付けられているものであること。
a そのハンドル等のみを保持して作業を行うことができるものであること。
b 適正な角度に取り付けられており、通常の使用状態で手指及び手首に無理な力をかける必要がないものであること。
c 工具の重心に対し、適正な位置に取り付けられているものであること。
d 防振ゴム等の防振材料を介して工具に取り付けられているものであることが望ましいこと。
e にぎり部は、作業者の手の大きさ等に応じたものであること。
f にぎり部は、厚手で軟質のゴム等の防振材料で覆われているものであることが望ましいこと。
イ.重量等
(ア) エンジンカッター、携帯用研削盤その他手で保持し、かつ、その重量を身体で支えながら使用する振動工具については、軽量のものであること。
(イ) 作業に必要とする大部分の推力が機械力又はその自重で得られるものであること。
(ウ) エアーホース又はコードは、適正な位置及び角度に取り付けられているものであること。なお、エアーホースの取付部は、自在型のものであることが望ましいこと。
ウ.騒音
圧縮空気を動力源とし、又は内燃機関を内蔵する振動工具については、吸排気に伴って発生する騒音を軽減するためのマフラーが装着されているものであること。
エ.排気の方向
圧縮空気を動力源とし、又は内燃機関を内蔵する振動工具は、作業者が直接マフラーからの排気にさらされないものであること。
② 7に規定する振動工具を使用しようとするときは、振動加速度ができるだけ小さいものとするとともに、加工の方法、被加工物の大きさ等に適合している支持台(ワークレスト)が取り付けられているものを選定すること。
(4)工具の操作時の措置
①工具の操作方法
ア.ハンドル等以外の部分は、持たないこと。
イ.ハンドル等は、過度に強く握らず、かつ、強く押さないこと。
ウ.さく岩機等により削孔、掘さく、はつり等を行うとき(特に、削孔の開 始時)は、たがねを手で保持しないこと。
なお、作業の性質上、たがねを固定する必要がある場合は、適切な補助具を用いること。また、下向きの削孔、掘さく等を行うときは、軽くひじを曲げできるだけ力を抜いて工具を保持するようにすること。
②作業方法
ア.ハンドル等を過度に強く握る作業方法、手首に強く力を入れる作業方法、腕を強く曲げて工具の重量を支える作業方法等の筋の緊張を持続させるような作業方法は避けること。
イ.肩、腹、腰等手以外の部分で工具を押す等工具の振動が直接身体に伝わる作業方法は、避けること。
ウ.振動工具を使用する労働者が、当該振動工具の排気を直接吸い込むおそれのある作業方法は、避けること。
③振動工具の支持
振動工具の重量を手で支えて使用する工具は、できる限りアーム、支持台、スプリングバランサー、カウンターウエイト等により支持すること。
④被加工物の支持について
7に掲げる業務を行うときは、できる限り被加工物をワークレストで支えて研削すること。
⑤たがね等の選定及び管理
たがね、カッター等は、加工の目的、被加工物の性状等に適合したものを選定し、かつ、適切に整備されたものを使用すること。 なお、適切な整備のためには、集中的な管理が望ましいこと。
(5)圧縮空気の空気系統に係る措置
①送気圧を示す圧力計をホースの分岐部付近に取り付け、定められた空気圧の範囲内で振動工具を使用すること。
②配管に、適切なドレン抜きを取り付け、必要に応じて圧縮空気のドレンを排出すること。
(6)点検・整備
①振動工具を製造者又は輸入者が取扱説明書等で示した時期及び方法により定期的に点検・整備し、常に最良の状態に保つようにすること。
②振動工具を有する事業場については「振動工具管理責任者」を選任し、振動工具の点検・整備状況を定期的に確認するとともに、その状況を記録すること。
(7)作業標準の設定
振動工具の取扱い及び整備の方法並びに作業の方法について、適正な作業標準を具体的に定めること。
(8)施設の整備
①休憩設備等
ア.屋内作業の場合には、適切な暖房設備を有する休憩室を設けること。
イ.屋外作業の場合には、有効に利用することができる休憩の設備を設け、かつ、暖房の措置を講ずること。
ウ.手洗等のため温水を供給する措置を講ずることが望ましいこと。
②衣服等の乾燥設備
湧水のある坑内等において衣服が濡れる作業を行う場合には、衣服を乾燥するための設備の設置等の措置を講ずること。
(9)保護具の支給及び使用
①防振保護具
軟質の厚い防振手袋等を支給し、作業者に使用させること。
②防音保護具
90dB(A)以上の騒音を伴う作業の場合には、作業者に耳栓又は耳覆いを支給し、使用させること。
(10)振動作業の作業時間の管理
(1)から(9)までに掲げる業務(以下「振動業務」という。)の作業時間については、次によること。
①2に掲げる業務のうち、金属又は岩石のはつり、かしめ、切断、鋲(びよう)打及び削孔の業務については、
イ.振動業務とこれ以外の業務を組み合わせて、振動業務に従事しない日を設けるようにすること。
ロ.1日における振動業務の作業時間(休止時間を除く。以下同じ。)は、2時間以内とすること。
ハ.振動業務の一連続作業時間は、おおむね10分以内とし、一連続作業の後5分以上の休止時間を設けること。 なお、作業の性質上、ハンドル等を強く握る場合又は工具を強く押える場合には、一連続作業時間を短縮し、かつ、休止時間の延長を図ること。
②前記1と2以外の業務について
イ.振動業務とこれ以外の業務を組み合わせて、振動業務に従事しない日を設けるようにすること
ロ.1日における振動業務の作業時間は、内燃機関を内蔵する可搬式の工具にあっては1日2時間以内とし、その他の工具にあってはできるだけ短時間とすること。
ハ.振動作業の一連続作業時間は、おおむね30分以内とし、一連続作業の後5分以上の休止時間を設けること。
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