【第3章】第4節 その他作業に伴う災害及びその防止方法②
3 労働災害送検事例
①労働者が軒先から落ちる 墜落防止措置未実施で建設業者を送検
岡山・倉敷労働基準監督署は、墜落防止措置を講じなかったとして、A建設㈱(岡山県B市)と同社代表取締役などを労働安全衛生法第21条(事業者の講ずべき措置等)違反の容疑で岡山地検に書類送検した。令和2年6月、同社労働者が死亡する労働災害が発生している。
労災は、B市の住宅工事現場で発生した。労働者は、地上からの高さ3.5メートルの屋根の軒先で資材の受け渡し作業を行っていた際に墜落している。
同社は、防網を張り、労働者に要求性能墜落制止用器具(安全帯)を使用させるなどの墜落防止措置を講じなかった疑い。【令和2年10月12日送検】
②墜落防止措置を講じず送検
神奈川・横浜北労働基準監督署は、令和2年3月に発生した労働災害に関連して、解体業の㈲A(神奈川県B市)と同社現場代理人を労働安全衛生法第21条(事業者の講ずべき措置等)違反の容疑で横浜地検に書類送検した。足場を組み立てるなどして作業床を設ける、労働者に墜落制止用器具(いわゆる安全帯)を使用させるといった対策を講じていなかった疑い。
労災は、C市内の木造3階建家屋解体工事現場において発生したもの。被災した労働者は、飛沫防止用のブルーシートを張る作業を行っていた。この時、地上から高さ約6メートルの場所から墜落し、脊椎損傷の重傷を負っている。
【令和2年9月2日送検】
③スレート屋根での墜落防止措置を怠り送検
千葉労働基準監督署は、スレート屋根上の作業における危険防止措置を講じなかったとして、㈱A(千葉県B市)と同社代表取締役を労働安全衛生法第21条(事業者の講ずべき措置等)違反の疑いで千葉地検に書類送検した。58歳の男性労働者がスレート屋根を踏み抜き墜落死する労働災害が発生している。
労災は平成30年8月5日に、千葉県B市内にある工場のスレート屋根修繕工事現場で起きた。屋根上で労働者が鉄板を敷く作業をしていた際、スレート屋根を踏み抜き、約10メートル下の床に墜落。労働者は救急搬送されたが、脳挫傷により同日死亡が確認された。【令和2年7月7日送検】
④スレート踏み抜き労働者が重傷 建設会社を送検
千葉労働基準監督署はスレート屋根を踏み抜き労働者が重傷を負った労働災害で、A㈱(千葉県B市)と同社の工事課長を労働安全衛生法第21条(事業者の講ずべき措置等)違反の疑いで千葉地検に書類送検した。
労働災害は令和2年3月16日に、C市D区内の工場のスレート屋根の修繕工事現場で起きた。屋根は令和元年の台風19号により破損したものだった。屋根は雨漏りを防ぐためにブルーシートが張られており、工事課長がブルーシートを止めていた土嚢を持ち上げたところ、スレートを踏み抜き6.5メートル下の地上に墜落した。工事課長は3カ月ほど意識不明の重体となった。現在は意識は取り戻しているが、重篤な後遺障害が残っているという。
労働安全衛生法は踏み抜きの危険があるスレート屋根のうえで労働者に作業をさせる場合、事業者は幅30センチメートル以上の歩み板を設けるか、ネットを張るなどの危険防止措置を講じなければならないと定めている。工事課長は現場に歩み板を持ち込んでいたが、屋根の上に上げておらず、数も足りていなかった。安全帯は腰に着用していたが、親綱を張っておらず、使用できない状況だった。
同労基署は「昨年の台風で屋根の修繕工事は増えている。職人不足により現在も修理が済んでいない屋根はまだたくさんあるため、危険防止措置を適切に講じてほしい」と話している。【令和2年6月30日送検】
⑤安全帯かける親綱を一部張らず 労働者が墜落
長崎労働基準監督署は、墜落防止措置を怠ったとして、型枠工事業の㈲A(長崎県B市)と同社現場責任者を労働安全衛生法第21条(事業者の講ずべき措置等)違反の疑いで長崎地検に書類送検した。労働者1人が墜落し、外傷性脳内出血などの重傷を負っている。
労働災害は令和元年7月27日、長崎県B市の17階建てマンションの新築工事現場で起きた。【令和2年5月22日送検】
⑥労働者が高さ10メートルから墜落死 歩み板設けず
東大阪労働基準監督署は、墜落防止措置を講じなかったとして、建設業の㈱A(大阪府B市)と同社代表取締役を労働安全衛生法第21条(事業者の講ずべき措置等)違反などの疑いで大阪地検に書類送検した。労働者1人が墜落し、死亡する災害が起きている。
労災は平成30年11月21日、大阪府C市の工場建屋の屋根補修工事で起きた。スレート材で葺かれた屋根の補修作業を行っていた労働者がスレート材を踏み抜き、10.3メートルの高さから墜落して死亡した。同社は作業時に歩み板を設けていなかった疑い。防網も一部にしか張っていない状態だった。
同労基署によると、同社は違反の理由として、期日が迫っていたために施工を急いでしまったことを挙げている。【令和2年5月22日送検】
⑦地上から5.6メートルの屋根上から墜落
和歌山・新宮労働基準監督署は、令和元年11月に発生した労働災害に関連して、A㈱(和歌山県B市)と同社代表取締役を労働安全衛生法第21条(事業者の講ずべき措置等)違反の容疑で和歌山地検新宮支部に書類送検した。
同社はB市内の2階建て木造家屋解体工事現場において、地上から高さ5.6メートル付近の屋根上で労働者に葺き土の撤去作業を行わせる際、囲いや手すり、覆いなどを設けなかった疑い。作業していた労働者は墜落し、負傷している。
【令和2年6月1日送検】
⑧墜落防止措置講じず 木建業者を書類送検
北海道・名寄労働基準監督署は、令和元年10月に発生した労働災害に関連して、木造家屋建築工事業のA㈱(北海道B市)と同社現場代理人を労働安全衛生法第20条(事業者の講ずべき措置等)違反の容疑で旭川地検名寄支部に書類送検した。
同社はB市内の建築工事現場において、墜落防止対策を講じなかった疑い。地上からの高さ3.5メートル付近で作業させる際に手すりなどを設けず、架設通路を使用させていた。【令和2年3月24日送検】
⑨20歳労働者が墜落し下半身麻痺 防止措置怠った建設業者を送検
さいたま労働基準監督署は、危険防止措置を怠ったとして、建設業の㈱A(東京都B区)と同社の現場責任者を安全衛生法第21条(事業者の講ずべき措置等)違反などの疑いでさいたま地検に書類送検した。20歳の男性労働者が作業中に墜落し、頚椎損傷で下半身麻痺の重傷を負っている。
同労働者は平成30年11月10日、埼玉県C市の木造住宅新築工事現場で建築資材の運搬作業を行っていた。住宅の2階床部分にあった作業床の端から足を踏み外し、3.6メートル下に墜落した。同社は墜落防止のための防網などを設けず、安全帯も使用させていなかった疑い。
同労基署によると、違反の理由として、危険と分かっていたにもかかわらず、作業を早く進めるために作業優先になっていた点を挙げている。【令和2年3月17日送検】
⑩16歳の労働者が墜落で重傷 年少者に高所作業をさせて書類送検
兵庫・但馬労働基準監督署は、満16歳の労働者に高さ5メートル以上の足場作業床の上で作業させたとして、2次下請として解体工事を請け負っていたAの代表者(兵庫県B市)を労働基準法第62条(危険有害業務の就業制限)および労働安全衛生法第21条(事業者の講ずべき措置等)違反の容疑で神戸地検に書類送検した。16歳の労働者が作業床から墜落して胸髄を損傷する労働災害が発生している。
労災は家屋改修工事現場で発生した。同代表者は16歳の労働者を地上から高さ5メートル以上の足場で作業させたうえ、昇降に使用するための設備を設けなかった疑い。法律では、満18歳に満たない労働者を高さ5メートル以上の墜落の危険がある場所で作業させてはいけないとしている。
また元請の立場で、高さが1.5メートルを超える場所にもかかわらず安全な昇降設備を設けなかったとして、㈱C(兵庫県D市)と同社現場代理人を労働安全衛生法第31条(注文者の講ずべき措置)違反の容疑で送検している。
【令和2年2月14日送検】
⑪作業に支障と手摺外し墜落 建設業を送検
茨城・土浦労働基準監督署は、製缶工場での工事中に墜落防止措置を講じなかったとして、A㈱(茨城県B市)と同社社長を労働安全衛生法第20条(事業者の講ずべき措置等)違反の疑いで水戸地検へ書類送検した。
労災は平成31年3月、B市にある製缶工場内で、天井クレーンの取り付け作業中に発生した。地上から4メートルの高さの足場から、社員が前のめりに墜落し、意識不明の重体となった。墜落防止のための手すりや中桟などを設置していなかった疑い。
一度は規定に満たない手すりを講じていたものの、取り付け作業の障害となるため、足場から取り除いていたという。【令和2年3月19日送検】
⑫作業床のある足場を設けず書類送検
兵庫・西宮労働基準監督署は、墜落防止措置を講じなかったとして、Aの個人事業主(大阪府大阪市B区)を労働安全衛生法第21条(事業者の講ずべき措置等)違反の容疑で神戸地検に書類送検した。令和元年10月、労働者が墜落して死亡する労働災害が発生している。
労災は、宝塚市の個人住宅外壁塗装工事現場で発生した。地上からの高さが2.3メートルである外壁に設置した丸太抱き足場の水平材上で塗装作業を行わせる際、作業床がある足場を設けるなどの対策を講じていなかった疑い。
【令和2年2月6日送検】
⑬スレート屋根踏み抜きで死亡労災 歩み板など設けず書類送検
鹿児島労働基準監督署は、平成30年5月に発生した死亡労働災害に関連して、足場仮設工事業の㈱A(鹿児島県B市)と同社現場責任者を労働安全衛生法第21条(事業者の講ずべき措置等)違反の容疑で鹿児島地検に書類送検した。スレートの踏み抜きによる墜落の危険があったにもかかわらず、幅30センチ以上の歩み板を設け、防網を張るなどの危険防止措置を講じていなかった疑い。
労災は、C市内の肥料工場の建屋で発生した。労働者4人が、地上からの高さ10.5メートル付近のスレート屋根上で足場を組み立てていた際、1人が屋根を突き破ってコンクリート床に墜落している。
鹿児島県内において平成31年1月~令和元年12月までに発生した休業4日以上の労災に関する速報値によると、労災1840件のうち墜落・転落に起因するものは341件だった。【令和2年2月19日送検】
⑭派遣労働者が被災 建設業者の代表者を書類送検
北海道・北見労働基準監督署は、令和元年6月に発生した労働災害に関連して、Aの代表者(北海道B市=建設業)を労働安全衛生法第21条(事業者の講ずべき措置等)違反の容疑で釧路地検北見支部に書類送検した。同代表者の下に派遣されて足場組立作業に従事していた労働者が、落下してきた資材に直撃して7カ月休業している。
労災は、北海道C町内の建設工事現場で発生した。
同社は、立入区域の設定などにより物体の落下による危険防止措置を講じなければならなかったにもかかわらず、これを怠った疑い。【令和2年2月7日送検】
⑮屋根上から墜落の労災で書類送検
兵庫・西脇労働基準監督署は、屋根塗装工事現場で墜落防止措置を講じなかったとして、Aの個人事業主(兵庫県B郡)を労働安全衛生法第21条(事業者の講ずべき措置等)違反の容疑で神戸地検に書類送検した。平成31年4月、労働者が重傷のケガを負う労働災害が発生している。
労災は、B郡内の建設物屋根塗装工事現場で発生した。労働者が地上から約3.5メートル付近の屋根上で手持ち式研磨機を使って屋根鋼板の研磨作業を行っていた際、墜落している。屋根は傾斜が41度もあった。
個人事業主は、足場を設けるなどの墜落防止措置を講じなかった疑い。
【令和元年12月10日送検】
⑯足場に手すり設けなかった塗装業者を書類送検
佐賀労働基準監督署は、令和元年9月に発生した休業4日以上の労働災害に関連して、㈲A(佐賀県B市)と同社代表取締役を労働安全衛生法第20条(事業者の講ずべき措置等)違反の容疑で佐賀地検に書類送検した。
同社は、令和元年9月25日、B市内の塗装工事現場において、労働者に地上から高さ4.4メートル付近の足場上で作業を行わせる際、手すりを設けるなどの墜落防止措置を怠っていた疑い。
被災した労働者は、塗装作業の前段階である高圧洗浄機を使った洗浄作業を行っていたところ、足場から墜落して重傷のケガを負っている。「送検日時点でも休業している」(同労基署)という。
【令和2年1月28日送検】
⑰中さん、手すりなし 個人事業主を書類送検
島根・益田労働基準監督署は、墜落防止措置を怠ったとして、Aの代表者(島根県B市)を労働安全衛生法第20条(事業者の講ずべき措置等)違反の容疑で松江地検益田支部に書類送検した。令和元年11月、同代表者に雇用されていた労働者が重傷の怪我を負う労働災害が発生していた。
労災は、個人宅屋根替えおよびリフォーム工事現場で発生した。同労働者が2階屋根上で屋根瓦の撤去作業中に、地上からの高さ4メートル83センチの屋根の端から墜落している。
同代表者は、墜落の危険があるにもかかわらず、屋根の端や架設階段に中さんや手すりを設置するなどの対策を怠っていた。
【令和2年1月7日送検】
⑱足場設けず墜落死 電気設備工事業者を送検
さいたま労働基準監督署は、墜落防止措置を講じなかったとして、設備工事業のA
㈱(東京都B区)と同社現場責任者を労働安全衛生法第21条(事業者の講ずべき措置等)違反などの疑いでさいたま地検に書類送検した。高さ2メートル以上で電気ケーブル設置作業を行わせていたにもかかわらず、足場を設けさせていなかった。
設置作業は地下駐車場で行われていた。労働者は、脚立に跨いだ状態で踏ざんに両足を乗せて作業していた。設置作業中だった電気ケーブルが労働者に向かって落下し、長さと重みに引っ張られて脚立から墜落。労働者は頭を打って死亡した。墜落防止の手摺りなどはなく、ヘルメットも装着していなかった。
労働安全衛生規則第518条では、事業者が高さ2メートル以上の箇所で作業を行う場合、足場などの作業床を設けなければならないとしている。同社は2メートル2センチの高さでの作業にもかかわらず、作業床などの墜落防止措置を講じていなかった疑い。
同労基署によると、手摺りや簡易足場、移動式足場があれば墜落を防止できたのではないかとしている。【令和元年11月26日送検】
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