【第1章】第1節 作業に用いる設備の種類、構造等④
3.作業の方法
ここでいう「作業の方法」とは、「高さ2m以上の作業床を設けることが困難な場所で、どうやって墜落転落災害から身を守りながら作業すべきか、その方法」ということです。
各種作業を安全に行うには、様々な保護具(墜落制止用器具等)や取り付け設備などのうちから作業に適したものを選択し、適切に使用することが必要となります。
1.基本的な考え方
墜落制止用器具は、フルハーネス型を原則とします。
ただし、墜落時にフルハーネス型の墜落制止用器具を着用する者が地面に到達する恐れのある場合は、胴ベルト型の使用が認められます。
2.適切な墜落制止用器具の選択
適切な墜落制止用器具の選択には、フルハーネス型又は胴ベルト型の選択のほか、フック等の取付け設備の高さに応じたショックアブソーバのタイプ、それに伴うランヤードの長さ(ロック付き巻取り器を備えるものを含む。)の選択が含まれます。
事業者は作業内容、作業箇所の高さ及び作業者の体重など各種条件に応じ適切な墜落制止用器具を選択し、確実に作業者に着用させる必要があります。
⇔ 「要求性能墜落制止用器具」
3.胴ベルト型を使用することが可能な高さの目安
胴ベルト型を使用することが可能な高さの目安は、フルハーネス型を使用すると仮定した場合の自由落下距離とショックアブソーバの伸び(最大値)の合計値に1メートル(=ハーネス等の伸び)を加えた値以下とする必要があること。
このため、いかなる場合にも守らなければならない最低基準として、ショックアブソーバの自由落下距離の最大値(4メートル)及びショックアブソーバの伸びの最大値(1.75 メートル)の合計値に1メートルを加えた高さ(6.75 メートル)を超える箇所で作業する場合は、フルハーネス型を使用しなければなりません。
※墜落制止用器具を使用していても、作業箇所が低い場合はその効果が期待できないことが多くあります。
作業箇所が2mを少し超えた程度では、フルハーネス型墜落制止用器具は役に立たないと判断しなければなりません。
カッコばかりではなく、落ちた時に自分の身が守れるかを考えて墜落制止用器具を使用しなければなりません。
4.墜落制止用器具の取付設備について
いくら高性能な墜落制止用器具を装着していても、フックを掛けるところが無ければ意味がありません。
また、取付設備自体の強度不足なども災害の原因になっているため、取り付け設備の選択や使用に当たって以下の注意点などがあります。
- 墜落制止用器具の取付設備は、ランヤードが外れたり、抜けたりするおそれのないもので、墜落制止時の衝撃力に対し十分耐え得る堅固なものであること。
- 取付設備の強度が判断できない場合には、フック等を取り付けないこと。
- 作業の都合上、やむを得ず強度が不明な取付設備にフック等を取り付けなければならない場合には、フック等をできる限り高い位置に取り付ける等により、取付設備の有する強度の範囲内に墜落制止時の衝撃荷重を抑える処置を講ずること。
- 墜落制止用器具の取付設備の近傍に鋭い角がある場合には、ランヤ ードのロープ等が直接鋭い角に当たらないように、養生等の処置を講ずること。
5.作業に当たっての心構え ~ 指差し呼称の励行
設備や保護具が使えるのに、フックを掛けていないために落下してしまった例も数多くあります。
安全のための設備や保護具を活かし労働災害を防止するためには、作業する方一人ひとりの安全意識の徹底が欠かせません。
「指差し確認」を実践し、「安全確保を確認してから作業すること」を徹底・継続しましょう。
そのためには「3秒の間(確認のための3秒を惜しまない心の余裕)」を持つことも大切です。
【自由落下とは】
重力によってモノや人が落ちていく速さは、(空気抵抗が無いものとすると)重さや大きさに関係なく一定です。(実際には金槌と紙では随分違いますが)
V(速度)=g(重力加速度≒9.8m)×t(時間) 式を見ると何だか面倒ですが・・・
0秒後 → 秒速0.0m
1秒後 → 秒速9.8m
2秒後 → 秒速19.6m・・・10秒後は9.8m×10=秒速98m、
つまり速度が1秒当たり9.8m/sずつ増えていくという単純な話です。
さて、身近なもので静止状態から加速していくものには車や新幹線、工具のモーターなどがありますが、それらは全てある一定の速度以上加速し続けることはありません。
一方、高所から落ちた場合は激突するまでスピードが上がり続けていきます。
より高いところから落ちた方が、ダメージが大きくなるわけです。
例えば、東京スカイツリーの展望デッキ(地上から約350m)の高さから落ちると、地面に激突した時の計算上の速さは時速にして約300kmにもなります。
また、この「(他に抵抗が無く)重力により加速し続けていく状態」を「自由落下」と言い、地面などへの激突を避ける対抗手段として墜落制止用器具があります。
次の図では、落ち始めた瞬間からショックアブソーバが効き始める直前までが「自由落下」です。
注)スカイダイビングなど非常に高いところからの落下では、空気抵抗によりある程度の速度以上にはならないとされています。
【フルハーネス型の落下距離等】
【胴ベルト型の落下距離等】
受講者様のご希望に合わせ、以下のタイプの講習会もご用意しています
このページをシェアする
講習会をお探しですか?