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【第4章】第1節 熱中症の災害事例(7)

2. 災害事例分析:原因と対策

熱中症による死亡災害に関する発生状況、原因、対策の事例を紹介します。


(4) 事例4:その他・サービス業

事故概要

社員食堂における熱中症

発生状況

災害は、6月初旬、昼の12時30分頃、社員食堂の食器洗浄室で発生した。被災者は、8名で、全員、食器洗浄作業を行っていたところ、倒れたり、その場に座り込んだりし、救急車等で病院へ運ばれた。災害発生事業場は、社員食堂における調理等を請け負う事業を行っており、当該食堂の従業員は53名(隔日勤務のパートタイマーが半数。) であった。

1.通常の作業

 食器洗浄室においては、10名の従業員が従事し、勤務時間は午前10時から午後2時までの4時間、途中に15分間の休憩がある。

 朝10時に出勤すると、空調装置、ガス給湯器等のスイッチを入れる。食堂は11時から営業を始め、11時40分頃からが客が多くなる。客は食事を終えると、セルフサービスで食器を返却口へ返却する。返却された食器は、残飯を処分した上で、スプーン、箸、大皿、小皿等に区分され、手作業で洗浄される。その後、再度、自動食器洗浄機によって洗浄された後、乾燥機により乾燥され、食器棚へ収納される。

 食器洗浄室内には食器洗浄機(1台)、ガス湯沸器(2台)、換気装置(1台)、乾燥設備(3台)のほか、冷房機(1台)が設置されている。


2.災害発生当日の状況

 午前10時頃、従業員の一人が最初に食器洗浄室に入り、換気設備、ガス湯沸器、食器洗浄機のスイッチを入れた。午前11時頃、多くの従業員は室内が暑いと感じ始めた。午後12時30分頃、従業員が気分が悪いと言って次々と横になった。

 食器を洗う音が止まったのに気づいた食堂のレジ担当者が食器洗浄室をのぞくと、何人もが倒れていたのであわてて助けを求め、被災者は救急車及び会社の車で病院に運びこまれた。

 被災者は、1名が2日の入院、他の7名はその日のうちに帰宅したが、3名が3日間休業した。その症状から、熱中症と診断され、酸欠及び一酸化炭素中毒の症状は見られなかった。被災者は、「当日は、仕事をしていると途中からいつもより暑くなった。ガス臭さ、息苦しさは感じなかった。」と、述べている。

 なお、前回の健康診断で被災者のうち1名が貧血の所見有り、1名が肝機能検査で所見有り、2名が血中脂質が高いとされているが、他の者は所見無しであった。


3.作業環境の状況

 翌日、換気設備、冷房機等を確認したところ、冷房機のスイッチが「送風」になっており、冷房が機能していなかったことが分かった。被災者の発言等から鑑み、前日までは正常に稼動していたと考えられる。

 後日、被災当日と同様の作業において、酸素濃度、室温等を計測したところ、湿度は85%~90%、酸素濃度21%、一酸化炭素濃度1PPM、室温22度(換気設備と冷房機が入った場合。但し乾燥機の前は32度。)~36度(換気だけで冷房機が入っていない場合。)であった。

  
原因
  1. 冷房機が機能していなかったこと(冷房機のスイッチを確認しなかったこと)
  2. 作業に取りかかる際の手順が定まっていなかったこと

が考えられる。

対策
  1. 冷房機のスイッチを湯沸器等熱源となる他の機器と連動させ、作業の開始とともに自動的に冷房機が運転されるようにすること。
  2. 部屋全体をまんべんなく冷やすことが困難な場合、特に暑くなる箇所や作業者が立っている位置等に効果的に冷房が効くようスポットクーラー等を導入すること。
  3. 室温及び酸素濃度等を自動測定し、異常な温度等になった際にブザー等で知らせる警報装置を設けること。
  4. 実際の作業に沿った具体的な作業手順を定める。
  5. 緊急時の避難方法、救助方法を定め、日頃から訓練を行っておくこと。
  6. 衛生委員会等において、職場の健康障害を引き起こすおそれがある要因について調査審議し、防止対策を確立しておくこと。

 

業種

その他

事業場規模

機械設備・有害物質の種類(起因物)

高温・低温環境

災害の種類(事故の型)

高温・低温の物との接触

被害者数

死亡者数:0人  休業者数:8人
不休者数:0人  行方不明者数:0人

発生要因(物)

発生要因(人)

発生要因(管理)

 

 

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