2.石綿による疾病の病理及び症状②
2-1 石綿粉じんの吸入②
④石綿による健康障害
石綿粉じんを吸入することにより、種々の疾病にかかるおそれがあり、少量吸入であっても発症している例もあります。
一般的には石綿ばく露吸入から発症までの期間が相当長いという特徴があり、年齢とともに体力が落ち呼吸しにくくなることが原因の一つと言われています。従って、「静かなる時限爆弾」と言われることもあります。
(1) 肺がん
肺がん(原発性)は、石綿に特異的な疾病である中皮腫とは異なり、喫煙をはじめ、石綿以外に発症原因が多く存在する疾病であり、石綿よりも喫煙の影響の方が大きいと言われています。
(2) 石綿肺
石綿肺は、石綿を大量に吸入することによって発生する職業性の疾病です。職業性以外の一般環境下における発症例は、これまでに報告されていません。
石綿肺は、一般的にばく露開始後概ね10年以上経過して所見が現れています。胸部エックス線により診断されるとともに咳等の症状が認められ、また、肺がんに罹患する危険性が高くなっています。
(3) 良性石綿胸水
良性石綿胸水の石綿関連疾患としての認知は、他の石綿関連疾患と比べて10年以上の遅れがあり、石綿肺に合併した良性石綿胸水は1971年、石綿肺を伴わない事例については1984年にそれぞれはじめて報告されています。胸水の性状は滲出(しんしゅつ)液で半数が血性であり、中皮腫の早期発見のため定期検査が必要です。
(4) びまん性胸膜肥厚
石綿に長期間ばく露した方、最初のばく露から長年経た方に有所見率は高くなっています。石綿ばく露によるびまん性胸膜肥厚の成因は単一ではないが、肺実質病変である石綿肺が進行し、臓側胸膜及び壁側胸膜に波及したものと考えられています。
(5) 中皮種
肺を覆っている胸膜・腹膜や心臓を覆っている心膜等に発生する悪性の腫瘍を言い、石綿の種類でいうとクロシドライトが最も多く、次いでアモサイト等の角閃石系石綿であるといわれています。クリソタイルはその危険性が少ないとされています。
肺に残った石綿繊維を肺のマクロファージやリンパ球等が消化や諸因子の分泌での処理を行いますが、安定的で耐酸・耐アルカリ性の石綿は、肺内の細胞の寿命をはるかに超えて残ってしまいます。そうした間に、石綿繊維を芯として、タンパク質と血液中の鉄分が付着し茶色の「鉄アレイ状形態」の物質となり、これを「アスベスト小体」と呼んでいます。
⑤石綿と喫煙
石綿肺による肺線維症が進展すると、呼吸不全で死亡する場合もあり、死亡率はばく露年数とばく露の程度によって影響されますが、年齢との相関はなく、喫煙者の死亡率が高くなるといわれています。
また、喫煙と石綿ばく露の肺がんに及ぼす影響についての研究結果から、喫煙の影響も大きいことが指摘されています。
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