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2.事前調査の方法等①

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2-1 事前調査とは

事前調査とは、建築物等の解体等工事を行う前に、当該建築物等に石綿含有建材が使用されているか否かを調査することをいいます。事前調査における石綿含有建材の見落としは、解体等を行う際の石綿繊維の飛散に繋がるため、石綿飛散防止対策において事前調査は極めて重要です。
事前調査の結果については、記録の作成や解体等工事現場への備え付け、発注者への説明、都道府県及び労働基準監督署への報告が必要になります。


2-2 事前調査の概要

調査は石綿含有無しの証明を行うことから始まり、その証明ができない場合は分析調査を行うか、石綿含有とみなすことが基本となります。

事前調査の概要

事前調査では、まず、書面調査や現地での目視調査を実施し、これらの調査で建材の石綿含有の有無が分からなかった場合は分析調査を行い、石綿含有の有無を判断しなければなりません。


2-2-1 書面調査及び現地での目視調査

書面調査及び現地での目視調査では、まず、設計図書等を確認し、書面上で石綿含有建材の使用場所等を把握する。その後、現地において設計図書と異なる点がないかを確認するとともに、建築材料に印字されている製品名や製品番号等を確認することにより使用されている建材を確認します。

確認した建材は、石綿(アスベスト)含有建材データベース(以下「データベース」という。)との照合などにより石綿含有の有無を判断します。

ただし、石綿(アスベスト)含有建材データベースに記載がないからといって石綿含有無しと判断してはなりません。

 ○書面調査

・設計図書等による、解体等工事に係る建築物等の設置の工事に着手した日、使用されている建築材料の種類を確認 ・使用されている建築材料のうち石綿が使用されている可能性があるものについて、石綿(アスベスト)含有建材データベース
https://www.asbestos-database.jp/)等を使用して石綿の含有の有無を確認

 ○現地での目視調査

・解体等工事に係る建築物等において設計図書と異なる点がないか、現地で建築材料に印字されている製品名や製品番号等を網羅的に確認し、特定建築材料に該当する可能性のある建築材料を特定する

・書面調査及び現地での目視調査で石綿含有の有無が把握できず、分析調査を行う場合は、現地で当該建材を採取する


事前調査は、解体等工事の作業に係る建築物等の全ての部分について行うものであり、内装仕上材の内側や下地等、外観からでは直接確認できない部分についても網羅して調査を行う必要があります。目視調査の段階で当該建築物等の構造上確認することができない箇所があった場合には、解体等工事に着手後、目視が可能となった時点で調査を行うことが必要です。


事前調査では、原則として書面調査と現地での目視調査は必ず実施しますが、平成18(2006)年9月1日の安衛法施行令改正によって、石綿が0.1重量%を超える物については、在庫品を含め、輸入・製造・使用等が原則禁止となっていることから、解体等工事が次のイ~ホに該当することが書面調査により明らかである場合は、石綿含有建材が使用されていないことと判断し、その後の書面調査及び現地での目視調査は実施しなくともよいとされています。

イ 平成18年9月1日以後に設置の工事に着手した建築物等(ロからホまでに掲げるものを除く。)

ロ 平成18年9月1日以後に設置の工事に着手した非鉄金属製造業の用に供する施設の設備(配管を含む。以下同じ。)であって、平成19年10月1日以後にその接合部分にガスケットを設置したもの

ハ 平成18年9月1日以後に設置の工事に着手した鉄鋼業の用に供する施設の設備であって、平成21年4月1日以後にその接合部分にガスケット又はグランドパッキンを設置したもの

ニ 平成18年9月1日以後に設置の工事に着手した化学工業の用に供する施設の設備であって、平成23年3月1日以後にその接合部分にグランドパッキンを設置したもの

ホ 平成18年9月1日以後に設置の工事に着手した化学工業の用に供する施設の設備であって、平成24年3月1日以後にその接合部分にガスケットを設置したもの


2-2-2 分析調査

書面調査及び現地での目視調査で石綿含有の有無が把握できない場合は、現地で当該建材を採取し、分析調査を行います。

ただし、石綿含有が不明な建材を石綿含有ありとみなして飛散防止対策を行う場合は分析調査を行う必要はありません。

なお、石綿含有ありとみなした場合、除去等の際は、例えば吹き付けられた材料であればクロシドライトが吹き付けられているものとみなして措置を講じる等、必要となる可能性がある措置のうち最も厳しい措置を講じなければならないとされています。

石綿含有建材であるとみなす場合、該当する建材の種類については書面による調査及び現地での目視による調査により、調査者等が確認します。特に、けい酸カルシウム板第1種と他の成形板等の区別、及びパーライト・バーミキュライトと仕上塗材の区別は、適用される作業基準が異なってくるため注意が必要です。


2-2-3 事前調査時の石綿の飛散・ばく露防止

事前調査は、解体等工事や石綿除去工事などの一連の工程における石綿の飛散及びばく露を最小化することを目的に行うものであり、事前調査中に石綿が大気中に飛散することや労働者が石綿にばく露することがあれば本末転倒となります。

そのため、事前調査では、石綿を含有する可能性がある粉じんを飛散させないこと、調査者等の粉じん吸入を防ぐことが必要となります。元請業者等は、実際に調査を実施する者と以下の方法で調査を行うことを確認します。

・建材に表示等されている情報の確認(裏面等の確認)は、原則、照明やコンセントなどの電気設備の取り外し等により行い、建材の取り外し等はできる限り避ける。

・やむを得ず建材の取り外し等を行う際や分析調査のための試料採取の際には、呼吸用保護具の着用や湿潤化など、作業に応じて石綿則に基づく必要な措置を講じる。


【注意】天井裏の調査のときは

吹付け石綿等直下天井上に堆積した石綿等の粉じんが飛散しないよう十分に留意が必要です。

調査のために、点検口を開ける際には呼吸用保護具を着用するとともに、点検口裏に堆積した石綿が飛散する危険性があるので、点検口廻りを簡易的に養生する等の飛散防止対策を施す必要があります。

【注意】煙突の調査のときは

煙突については、当該建材が劣化し、その破片が煙突下部に落下している場合もあると考えられます。灰出口を開けるときなどこれらの石綿を含有する破片等を取り扱う場合も、石綿則の適用があり、呼吸用保護具等の措置を確実に実施するとともに、その処分に当たっては廃棄物処理法に基づく措置等が必要であることに留意し、事前調査においては石綿を含有する破片等の有無も確認する必要があります。


2-2-4 事前調査実施の義務を負う者

大防法では、建築物等の解体等工事の元請業者又は自主施工者が、当該解体等工事が特定工事に該当するか否かについて調査することとされています。

一方、石綿則では、事業者が、建築物等の解体等の作業を行うときにあらかじめ石綿等の使用の有無を調査することになっています。

ただし、事業者がそれぞれ事前調査を行うことは効率的ではない場合があるため、実際には工事の元請業者等が主体となって事前調査を行い、当該調査結果を下請負人に伝達することとなります。

過去に石綿の使用状況に関する調査されている建築物等で、大防法や石綿則に基づく事前調査を行う場合は、事前調査の義務を負う元請業者等及び事業者は当該調査の結果を確認し、自らが行う工事の範囲で調査漏れの部分がないか、調査が適切な手法で行われているかを改めて確認し、調査漏れや調査内容において不明な部分があれば補完のための調査を行う必要があります。

例えば、発注者から解体等の対象建築物等について、単に「石綿なし」との情報があった場合でも、事前調査の義務を負う者はその情報を鵜呑みにせず、大防法、石綿則等の関係法令に基づいて石綿含有建材の有無を精査する必要があります。

過去に石綿含有建材かどうかを調査していた場合、当該結果を書面調査の1つの資料として使用することも考えられ、また、過去の調査方法が現在の大防法、石綿則の規定に従ったものであるときは、その結果を活用することも考えられます。そのため、過去に調査が行われている場合は、石綿に係る事前調査の意味を発注者に十分説明し、書面により具体的な調査範囲・内容の分かる情報を入手することが重要となります。


2-2-5 事前調査を実施する者

適切に事前調査を行うためには、石綿含有建材の使用の有無の判断を行う者は、石綿に関し一定の知見を有し、実際に調査を実施した上で的確な判断ができる者(調査者等)である必要があります。

令和5(2023)年10月からは、大防法及び石綿則において、建築物については調査者等に書面調査及び現地での目視調査を行わせることが義務化されています(一般個人による事前調査は除く)。

なお、調査者等とは以下の者が示されています。

<建築物(一戸建ての住宅及び共同住宅の住戸の内部※を除く)の事前調査の調査者等>

①建築物石綿含有建材調査者登録規程に基づく講習を修了した特定建築物石綿含有建材調査者及び一般建築物石綿含有建材調査者又はこれらの者と同等以上の能力を有すると認められる者

<一戸建ての住宅及び共同住宅の住戸の内部の事前調査の調査者等>

①の者

②建築物石綿含有建材調査者登録規程に基づく講習を修了した一戸建て等石綿含有建材調査者

※「一戸建ての住宅及び共同住宅の住戸の内部」は、一戸建ての住宅及び共同住宅(長屋を含む。以下同じ。)の住戸の専有部分を指し、共同住宅の住戸の内部以外の部分(ベランダ、廊下等共用部分)及び店舗併用住宅は含まれない。


また、石綿則においては分析調査を行う者についても要件が定められています。分析調査を行うことができる者について以下に示します。なお分析対象となる建材の採取については、採取箇所の判断を適切に行う観点から、現地における目視調査とあわせて調査者等が行うことが望ましいとされています。

<分析調査を行う者>

③所定の学科講習及び分析の実施方法に関する厚生労働大臣の定める所定の実技講習を受講し、修了考査に合格した者又は同等以上の知識及び技能を有すると認められる者


事前調査の流れ1
事前調査の流れ2

 


2-2-6 石綿含有の有無の判断

現地での目視調査を踏まえ、建材の石綿含有の有無を判断します。判断には、以下の三種類があります。

 ①読み取った建材情報と各種情報との照合による判断

 ②分析による判定

 ③石綿含有とみなして取り扱う

石綿含有とみなす場合は、吹付け材や保温材等を作業基準のことなる成形板等や仕上塗材として扱わないよう注意が必要です。

石綿含有とみなした場合は、当該解体等工事は石綿含有建材の除去等に該当することはもちろん、当該建材が廃棄物となった際に廃石綿等又は石綿含有産業(一般)廃棄物として扱うことになります。


2-2-7 試料採取・分析

分析を行うこととなった建材の試料採取については、目的とする分析対象を採取できるよう同一材料と判断される建築材料ごとに、代表試料を選定し、採取しなければなりません。

定性分析

2-2-8 事前調査の記録及び報告書の作成等

事前調査を行う際は、書面調査、目視調査時の現場メモをもとに、事前調査の記録を作成します(みなしや分析を行った場合にはその結果を含む)。

その後、その記録をもとにして事前調査の報告書を受注者が責任者となりとりまとめ、大防法に基づき発注者に書面で報告します。

また、調査業者が受注者とは別の場合は、調査業者は発注者、除去業者及び解体業者に対して、実際の現場において事前調査を行った範囲や内容について説明をする場を設けることが望ましいとされています。


 

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