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【第3章】第1節 換気装置の使用方法等

1 酸素欠乏症等の防止と作業主任者の職務

酸素欠乏症等防止規則では、過去の災害事例を基に災害防止のため指定場所(安衛令別表第6に定める場所)での作業については作業主任者を選任し、その者に作業指揮をさせなければならないと定めています。

その職務として、現場で必ず行うべき重要事項には以下のものがあります。

① 濃度「測定」をすること

➡ そもそも酸素不足のところや硫化水素濃度が高いところで作業をするから災害が起こるので、最初に測定し、問題があれば対策を講じてから作業する

② 濃度が基準を満たさないときは「換気」をすること

➡ 空気に問題があるのだから、新鮮な空気と入れ替える

③ 換気をしても濃度が基準を満たさないときは作業者に「保護具」を使用させること

➡ 空気を入れ替えても濃度が基準に満たない場合は、作業者に有効な保護具を使用させる


他にも、測定器具や換気装置・保護具といったモノの管理、作業方法や保護具の使用状況などの監視及び必要な指示などの監督活動、異常の発見や緊急事態への対処なども作業主任者の職務ですが、これらのことは災害防止のために当然作業者も知っておくべき事項です。

酸素欠乏症等の防止と作業主任者の職務

2 換気装置の使用方法

換気の方法は自然換気と機械換気に分けられます。

タバコの煙で部屋の空気が汚れたので窓を開ける、というのが自然換気ですが、作業現場ではなかなか思うように換気効果が期待できなかったり、タンクや地下ピットのように、自然換気をしようにも放っておいたのでは空気が入れ替わってくれない場合もたくさんあります。

そこで、送風機などを使って換気する方法を機械換気と言います。建設現場などでは「換気」というと、多くが機械換気のことを示しています。

図3-1 送風機(ポータブルファン)と風管

送風機は扇風機と同じように電気で羽根を回転させることにより、一定の方向に風が流れます。また、送風機とは呼びますが逆向きに据え付ければ排気にも使えます。(排風機という呼び方もあります)

通常、給気に使用する場合は新鮮な空気の供給できる場所に送風機本体を設置し、目的の場所まで風管(フレキシブルダクト)をつないで使用します。排気に使用する場合もほぼ同様で逆の使い方ですが、排出する気体の内容によっては、本体設置場所(排出場所)での毒性や引火性などに関する配慮が必要な場合もあります。


図3-1は口径200mm・100V、25/35(㎥/min)タイプのものですが、対象となる場所の気積(空気の体積)や、作業人数に適合する仕様のものを使用します。作業者一人当たり10㎥/min以上が目安とされていますので、例えば5人で作業する場合は上記の機械では能力不足ということになります。

なお、換気については作業主任者が具体的に設計(必要な換気量や送風機の能力を計算・測定して換気時間を決めたり、送風機の設置場所を決めるなど)しますので、その指示に従って設置します。


3 換気の種類

換気の種類は、例えば住宅建築時の換気システムや作業現場で毒性のある気体を扱う場合など、その目的によって様々なものがありますが、酸素欠乏症等の防止のための換気は主に「全体換気」と呼ばれるもので、対象となる空間の空気全体を入れ替えようとするものです。

そして、全体換気を送風機を使用して行う場合にも、①給気式、②排気式、③吸排気式の三種類の方法があります。


① 給気式

タンクなど密閉性の高い場合で、給気のみ行う方式。内部は常に陽圧(外気より気圧が高い)になるため、ほぼ給気と同量が開口部より排気される。

ダクトの位置によって既存の空気との混合度が変わる為、換気効果にムラが生じる恐れがある。

給気式

② 排気式

①とは逆に排気のみ行う方式。内部は常に陰圧(外気より気圧が低い)になるため、ほぼ排気と同量が開口部より給気される。

換気効果を高めるため、ダクトの位置は出来るだけ最深部(給気部分の対角線)がよい。

排気式

③ 給排気式

密閉性に乏しく①②の方式により難い場合で吸気と排気の両方を行う方式。換気効果や換気を継続しながら作業を行う場合の安全性は高い。

一方、給気と排気のバランスによっては、内部が陽圧にも負圧にもなる為配慮が必要な場合がある。

また、給気・排気のダクトの距離によっては新鮮な空気のほとんどを排出してしまうことになりかねないので、設置する位置に注意が必要である(給気と排気が近すぎる場合「短絡」という)。

なお、換気を継続しながら作業する場合、給気ダクトは作業者の呼吸に配慮して高さを設定する必要があります。

給排気式

【換気に関する酸素欠乏危険場所での一般的な対応】


(測定結果が濃度基準を満たさない場合)

その場所の気積の5倍以上の新鮮な空気を送気した後濃度を測定し、安全であることを確認する。


(作業中の換気)

作業者一人当たり10㎥/min以上を目安に換気する。

作業している間20回/時以上の割合で内部を均一に換気できるように送気を継続する。

※ここでは酸素欠乏空気と硫化水素を対象にしていますが、気体の性質(毒性や引火性など)・比重によっても換気の方法や使用設備(防爆型など)、ダクトの設置位置なども変わってきます。

例えば地下構造物で内部塗装をする際に、排気ダクトを高いところに設置すると、(有機溶剤は全て比重が空気より重いため)底に溜まっている溶剤の蒸気を作業者が吸い込むことになります。

有機溶剤は全て比重が空気より重い

 

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