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【第二章】 振動障害及びその予防に関する知識

振動障害の歴史・経緯

 18世紀後半にイギリスから始まった産業革命は人類に飛躍的な文明の進歩をもたらしましたが、その副産物として様々な問題も発生しており、その一例が振動障害ということもできます。


 産業革命といえば、それ以前には考えられなかったようなエネルギーの発見と活用、例えば蒸気による汽車や機械、石油による内燃機関、電気による工具などが思い浮かびますが、振動工具については19世紀半ばの圧縮空気による工具(さく岩機)が最初とされています。続いて1905年にはガソリンエンジンのチェーンソーが出現しています。


 日本国内では1881年にさく岩機が使用開始されていますが、チェーンソーの導入は戦後となっています。

 そしてこれらの結果、江戸時代などの手工具の時代ではあり得なかった障害が、現代人には起こり得るようになってしまったということでもあります。


 なお、振動障害が問題となり始めたのは19世紀になってからであり、国内では1938(昭和13)年に打鋲機を28年使用した例によるものが研究・報告されており、この時にコンクリートブレーカーによるものも報告されています。ただし、当時(戦前)は業務上の疾病とは認定されていませんでした。


 日本で振動障害が大きく取り上げられ一般にも知られるようになったのは、エンジン付きのチェーンソーが急速に普及した1950年代後半(昭和30年代以降)からとなっており、当時は『白ろう病』としてマスコミに取り上げられたことから、一時チェーンソーにつきものの疾病としてこの名称が有名になりました。


 また、振動障害に対する規制・施策としては、

・1969年に林野庁が労働組合との「振動障害に対する協定」を結び、一定期間内(1日・1週・1月)の作業時間の規制が設けられた

・1977年労働省による振動加速度3G以上のチェーンソーの販売禁止

などが挙げられます。


 その後遠隔操作が可能な機械工具の開発・普及や産業構造の変化・関連施策(通達等による)の浸透などもあり、1970年代前半には年に2000人を超えていた新規振動障害認定者数が、現在では20名程度まで減少しています。

 なお、振動工具以外にも、配達等でオートバイを常時使用する方が振動障害を発症している例があります。





 

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