1-2 建設現場の統括管理
(1)建設業の労働災害の現状と課題
① 建設業の労働災害の特徴として以下のものがあります。
- 墜落・転落による災害の多発
- 建設工事機械(車両系建設機械など)による災害の多発
- 交通労働災害、飛来落下、崩壊・倒壊災害が後を絶たない
- 職業性疾病(腰痛・じん肺症など、振動障害・酸素欠乏など、有機溶剤中毒、一酸化炭素中毒等)の多様化
- 高年齢労働者の被災が増加
②安全衛生管理の課題
建設業の特徴は重層下請構造のもと、所属の異なる労働者が同一場所で作業する形態が多く、工程の進捗により短期間に作業内容が変化したり、自然環境にも左右されるといった、他の業種に比べ数多く安全衛生管理上の問題点があります。
従って、元方事業者による統括管理の徹底はもちろん、関係請負人の法令順守や自主的な安全衛生活動の推進などが求められます。
※ なお、安衛法では元請を「元方事業者」下請を「関係請負人」とよんでいます。
(2)安全衛生管理体制と統括管理
①安全衛生管理体制について
安衛法では、事業場の業種や規模ごとに安全衛生管理体制を定めていますが、建設業の場合は次の二つがあります。
まず、各単独事業場(店社)ごとの管理体制があります。(➡ 総括安全衛生管理)
また、同じ場所で複数の事業者が混在して作業を行う(=混在作業)場合、それらによって生じる労働災害を防止するため、建設現場ごとの管理体制があります。(➡ 統括安全衛生管理)
②統括管理
建設現場には「単独の事業者のみの現場」と「複数の事業者で作業を行う現場」の二種類があります。
このうち「複数の事業者で作業を行う現場」を「混在作業現場」といいます。「混在作業現場」では通常、元請と複数の下請の事業者が混在して作業を行うため、自社だけなら起きないようなトラブルが発生することがあります。つまり、いくら自社だけが安衛法上の事業者責任を果たしていても、他社の労働者に影響を与えたり、他社から影響を受けるおそれのある作業もあるということです。こういったトラブルを未然に防止する趣旨で設けられているのが、元方事業者による「統括管理」です。
混在作業現場の労働災害の防止を図るためには、元方事業者、関係請負人、労働者などが一体となって安全衛生管理を総合的・計画的に進めることが重要です。
そのため、安衛法でも「統括安全衛生責任者や安全衛生責任者の選任」、「特定元方事業者等の講ずべき措置」などを決め、混在作業現場の安全衛生管理を義務付けています。
また、建設業の混在作業現場における労働災害を防止するため労働省(当時)より「元方事業者による建設現場安全管理指針(平成7年4月:以下「元方指針」という)」が示され、現在これを基本とした管理が進められています。
~「元方事業者による建設現場安全管理指針」(平成7年)より~
(3)混在作業における統括管理上の問題点
混在作業現場における安全衛生管理(統括管理)上の問題点として、次のような事項があげられます。
これらの問題点から生ずる労働災害を防止するため、建設業においては店社および作業現場の安全衛生管理体制を明確にするとともに、作業間の連絡調整に努めながら各々が具体的な安全対策を講じる必要があります。
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