11-2 毎日の安全施工サイクル
11-2-7 作業中の指導・監督
第5章に一般的な「作業中の監督・指示」がありましたが、ここでは安全施工サイクルの中での実施項目として取り上げられている、職長による作業中の指導・監督を対象としています。
職長は、作業中出来るだけ受け持ちの工区内を巡視し、災害防止及び業務の遂行のため、自社の作業者に対する指導・監督に努めなければなりません。
主なポイントとして次のものが挙げられます。
①作業計画、作業手順、技術的事項や安全ミーティングの結果に基づいた作業
②作業者の適正配置状況、不安全行動の排除
③建設部材や機械設備などの不安全状態の排除
④混在作業による危険の排除
⑤建設機械、車両などの運行による危険の排除
⑥天候・気象条件など作業環境への対応
また、現場慣れによる“マンネリ化”防止の意味でも、当日作業におけるポイント(危険性または有害性など)を決めて監督活動に望むようにします。
11-2-8 安全工程打合せ
(1)安全工程打合せと作業間の連絡・調整とは
毎日一定時刻に、工事事務所(会議室)などで元方事業者が主催し、下請、別途工事事業者の関係者(元請;所長、元方安全衛生管理者、担当職員、安全担当者。下請;現場責任者、安全衛生責任者、職長、二次以下の工事担当者も同席。別途工事事業者;所長、主任などの元方事業者)が出席して、工程打合せ会が行われます。その際、安全衛生に関する連絡調整・情報交換・元請事業者による指示等も併せて行われるため、「安全工程打合わせ」と称して安全施工サイクルの項目として組み込まれています。
職長・安全衛生責任者またはこれに準ずる者は、安全工程打合せに出席し、当日の作業の進行状況や翌日の作業予定などを確認します。その際に各事業者の翌日の作業や重点実施事項などを確認し、状況に応じ必要な調整を図ります。
また、その結果は、例えば「安全工程打合せ書・安全衛生指示書」に記載して、出席者の「サイン」を取り、これをコピーし関係者に配布します。
(2)主な打合せ内容
①当日の進捗状況を踏まえた翌日の作業の調整、関係者への指示、記録
②業者間による上下作業の時間帯調整、作業方法の確認
③クレーン等共用機械類の使用時間、作業内容、作業方法、作業責任者の調整・確認
④共用設備(足場、通路など)の使用時間、作業内容などの調整・確認
⑤危険箇所の周知、標示、確認などの指示
⑥関係者間で打合せのうえ、各作業の重点事項等を記入した「作業指示書」の作成・交付
⑦計画変更された作業、新たに着手する作業などに関し、使用機械・材料・工具・作業手順・資格者の要否・人員などについての打合せ
(3)安全工程打合せの事前準備
翌日の作業予定に関して、以下について事前打合せしておきます。
①職長・安全衛生責任者は、自社の作業主任者、作業指揮者、下請負業者の職長・安全衛生責任者を集め、翌日の作業打合せを行い作業方法等を決定する。
②混在作業に関して問題がある場合は、対象となる他職の職長・安全衛生責任者と下打合せを行い、自社の作業との調整をする。
③安全工程打合せの前に自社の当日の工事進捗状況および安全衛生上の問題点を十分に把握し、元方事業者の安全担当者に作業進捗状況、以後の作業予定、問題点とその解決策などを報告する。
(4)安全工程打合せ(作業間連絡調整)の進め方
①職長・安全衛生責任者の役割、心構え
打合せ会は元方事業者の施工計画に基づく工程管理および安全衛生管理上の調整をするために、作業指示が順次工事業者ごとに行われます。その際職長・安全衛生責任者は、自社が担当する工事における施工上の問題点や危険性または有害性などを把握し、その解決策を提示できるよう事前準備して出席する必要があります。
特に再下請負業者がある場合には、前もって問題点と解決策を調整のうえ、その業者の職長・安全衛生責任者と一緒に出席することで打合わせをスムーズに進めます。
イ.絶対に、欠席・遅刻しない
ロ.できないことは安易に妥協しない。(資格、作業者数、作業量、工期等)
ハ.協調性を持つ
ニ.記録を必ずとる
ホ.打合せに基づいた作業指示書を作成する
②打合わせに基づく措置
安全工程打合せの結果については、「安全工程打合せ書・安全衛生指示書」のコピーを渡されることが多く、出席した職長・安全衛生責任者は、書類の内容が打合わせ内容と相違ないことを確認して受領します。不明確なことや打合せ調整した内容と違うことがあれば、必ずその場で担当者に申し出ます。
③翌日の手配
職長・安全衛生責任者は、打合せた計画、作業内容に問題が無いか念入りに確認した後に、人員、資機材など必要な手配を行います。
④作業主任者などへの周知
職長・安全衛生責任者は、安全工程打合せ会の前に、作業主任者、作業指揮者などを集めて作業打合せを行い、翌日の作業予定を決定したうえで安全工程打合せ会に出席します。安全工程打合せの結果予定作業に変更が生じた場合は、作業主任者、作業指揮者など関係者を集め周知します。
⑤作業員への周知
安全ミーティングにおいて、安全工程打合せの内容と安全衛生指示を簡潔に、要領よく伝達し周知します。
⑥打合せ事項・指示事項などの実施管理
職長・安全衛生責任者は、打合せ事項や職場巡視などでの元請け指示事項、その他必要な安全衛生上の対策などの実施について管理するとともに、当日の作業変更により生じた新たな対策等の決定・実施についても、打合せ書の「実施事項」記録欄に記録しておきます。
11-2-9 持ち場の後片付け
持ち場の片付けは翌日の作業の準備であるとともに、良好な作業環境を維持することによって災害防止と作業能率の向上を図るためにも必要であることを理解し、毎日終業後の5分から10分間程度で必ず実施します。
イ.不用材、発生材の片付け、指定場所への集積
ロ.安全通路、詰め所などの共用部分の整理・整頓・清掃
ハ.未使用材の整理および資材や器具の保管場所への返却
ニ.翌日の使用工具、器具、材料などの準備・確認
11-2-10 終業時の確認
職長・安全衛生責任者は持ち場の後片付けに引き続き、終業時の確認を行います。特に住宅地の工事などでは、作業現場周辺に残土・不用材・たばこの吸い殻・その他のゴミなどが放置されていないかなどの確認が大切です。その際に、付近住民へのあいさつも心掛けるようにします。
終了時の確認・報告 | |
---|---|
い つ | (1) 作業終了後 |
どこで | (2) 作業場所と周辺 |
だれが | (1) 元方事業者 → 係員、安全当番 (2) 関係請負人 → 職長・安全衛生責任者 |
何を どのように |
(1)元方事業者 ・職長・安全衛生責任者からの作業終了報告を受ける ・元方事業者によるチェック(火の始末) ・チェックによる再手配 ・事務処理 ・係員からの作業所長あて報告 (2)関係請負人 ・片付け状況の確認 ・場内(開口部その他)の養生確認 ・火(溶接など)の始末の確認 ・重機のキーの取り外しと保管状況の確認 ・事務所の施錠の確認 ・電源の遮断と電源盤施錠の安全確認 ・第三者の立入禁止措置及び防護施設の整備、確認 ・翌日作業の手配もれ事項の有無と調整 ・残業時の元方事業者への報告 ・事務整理 ・作業所長への終了報告 |
何のために | (1)安全・品質・工程の確保 (2)防火・盗難・第三者災害などの防止、翌日の作業準備 |
11-2-11 元方事業者への報告
持ち場の後片付けを終え終業時の確認が完了したら、速やかに元方事業者へその旨を報告します。
なお、やむを得ず残業する場合も必ず元方事業者へ報告しておきます。
11-2-12 安全通勤
会社から現場まで乗り合わせて移動する場合は、往復の道中も業務の一環であるとの自覚を持ち、安全な運行に努めなければなりません。特に運転者への話しかけや、大声での会話など、安全運転を妨げるような行為をしないよう配慮が必要です。
また、往路では時間に遅れそうなための速度超過や信号無視、帰路は居眠り運転による事故なども懸念されるため、職長は状況に合わせて適切かつ必要な指示をしなければなりません。
また、会社と自宅の往復も含め、特に自動車による移動には大きなリスクを伴います。冷静に考えてみると、公道には建設現場に匹敵する危険があると言えるかもしれません。常日頃から交通安全に関する指導・教育が望まれます。
11-3 毎週実施する安全施工サイクル活動
11-3-1 週間安全工程打合せ
作業や行事を週間単位で実施するものもあり、それらは週ごとに週間安全計画を立てて事前の段取り、手配の調整などを行います。
これらの連絡調整のため、原則週に1回安全工程打合せを実施します。これには、毎日作業しない職種や材料納入業者も出席が望まれます。
11-3-2 週間点検
職長会当番によるパトロールなど、毎日の点検とは違った視点で、人的・物的なものについて点検対象・範囲・担当者などを明確にして実施します。
11-3-3 週間一斉片付け
共用部分を中心に、曜日・時間を定めて後片付けや整頓・清掃を実施します。
地域・講習・人数に合わせてすぐに予約可能
講習会を予約する
このページをシェアする
講習会をお探しですか?