7-1 異常時における措置
(1)異常とは
異常とは、設備、機械などの不安全な状態や、危険な位置で作業するなどの不安全な行動など、あるべき一定の基準から外れた状況の出現をいいます。
この異常を放置すると正常な状態とのズレが大きくなり、さらに放置しておくと事故や災害につながるおそれがあります。
点検・パトロール・監督活動・ヒヤリハット報告・リスクアセスメントなど、各種の活動を確実に行うことにより異常を早期に発見し、是正することが求められます。
(2)異常を発見した場合の措置
現場は常に正常な状態であるとは限らないので、異常を早期に発見するように努めることが大切です。
それ自体は小さな異常でも、放置するとやがて大きな事故や災害につながった例は数多くあります。小さなことでも見逃さず、これを排除するよう努めます。
異常を排除するためには、次の点に留意します。
① 異常を正確に把握する
異常がどこで発生してどの程度であるか、時間的余裕はあるかなど正確に把握することで、避難や応急措置など状況に応じた適切な措置を取りやすくなります。
② 応急措置
イ. 非常停止(停める)
機械・装置関係で事故発生のおそれがあるときは緊急措置として電源を遮断し、機械・装置の一部または全部について非常停止を行う。
ロ. 避難
火災、土砂崩壊などで、二次災害のおそれがある場合、作業者など関係者を速やかに安全な場所に退避させ、立入禁止措置を講じる。
職長・安全衛生責任者は、自分自身が慌てたり、動揺したりせずに、事前に定めた方法と状態をよく判断し、迅速な誘導をすることが大切である。
ハ. 通報
緊急時の連絡先および連絡方法などについて十分に把握し、作業者に対してふだんから教育訓練を行っておく。
③関係者への連絡、報告
異常事態に対して応急処置をとる一方で、元方事業者や上司に状況を報告して、その指示を受けます。また、必要に応じ安全衛生担当部門、その他の関係者にも連絡します。
(3)天候の異常
暴風、強風、大雨、大雪などの悪天候時の屋外作業は非常に危険であるため、不測の事態が生じないうちに作業中止などの指示をすることが必要です。
- ① 暴風・・・・・・・瞬間風速が毎秒30メートルを超える風
- ② 強風・・・・・・・10分間の平均風速が毎秒10メートルを超える風
- ③ 大雨・・・・・・・1回の降雨量が50ミリメートル以上の雨
- ④ 大雪・・・・・・・1回の降雪量が25センチメートル以上の雪
- ⑤ 中震以上の地震・・震度4以上の地震
(4)職長・安全衛生責任者の心得
職長・安全衛生責任者は、作業場で異常事態が発生した場合、直ちにその対応を冷静に判断し、正確な指示・命令ができるよう普段から心がけておかなければなりません。そのためには、予め異常の発生を想定し、「異常時の措置基準」を作成しておくのも一案です。
道路拡幅工事で掘削した法面(のりめん)が崩壊し、
作業中の3名が生埋めになる
この災害は、道路拡幅工事において、掘削した山側の切土法面(のりめん)が頂部から突然崩壊し、作業中の3名が生き埋めとなったものである。
災害のあった現場は、延長約200mの道路拡幅工事で、掘削個所の高さは52m、勾配は59度から64度で設計されていた。
掘削作業は、ブレーカー等による機械掘削で行われ、一部の固い岩盤の個所は発破により掘削し、掘削作業が終了したあとは、法面(のりめん)防護工として現場吹付け法枠(のりわく)工、アンカー法枠(のりわく)工を採用していた。
災害発生当日は、前日から台風の影響で雨が降ったり、止んだりの天候であったが、X建設の専属下請Y社は作業者4名でモルタルを吹き付けた法面(のりめん)にラス金網を張り、フリーフレームと呼ばれる法枠(のりわく)を取り付け、その法枠(のりわく)を固定するために、削孔機とハンマーでアンカーピンの打ち込む作業を行った。
午前中に法面(のりめん)左半分を完了し、午後には右半分に取りかかり、4時30分頃、班長Aと作業者Bは下から3段目、作業者CとDは1段目で作業を行っていたとき、法面(のりめん)が左上部から右下部にかけて崩壊し、作業中の4名のうちB、C、Dの3名が生き埋めになり、3名とも死亡した。
原因
1.工事現場の法面(のりめん)は、今回の崩壊の前に数度にわたって小規模の崩落があり、災害の発生した個所の下方部分がオーバーハングの状態になっていたこと
2.土砂崩壊の発生のおそれがあったにもかかわらず、作業を続行させていたこと
前日には工事現場の地域に大雨警報が発令される程の降雨があり、工事現場から約1.2kmはなれた地元の雨量観測所における観測では、前日の午前0時から当日の午後4時までの間に169mmの降雨が記録されている。
3.元請の現場責任者が不在であったため、降雨等で崩落のおそれがあるにもかかわらず、作業を中止させる等の適切な指示がなされていなかったこと
4.降雨等による危険が予想される場合の作業中止等の基準があらかじめ定められていなかったこと
5.下請事業場を含む統括安全管理体制が確立されていなくて、安全管理が不十分であったこと
(5)異常処理後の措置
異常、ヒヤリ・ハットは事故や災害と同じように取り扱い、原因の究明を行って再発防止措置をとることで、同種の異常事態や災害を防ぐことができます。
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