7-2 災害発生時の措置
(1)事前の備え
災害・事故が作業場で発生した場合に備えて、あらかじめ災害の種類、程度などに応じて「だれが」「だれに」「どのように」通報するのか、その方法や緊急通報体制を確立し、関係者に周知しておくことが必要です。
また、緊急通報体制に沿って訓練を行うとともに、応急手当や救命救急法およびAED(自動体外式除細動器)の使用方法などを身に付けておくことも必要です。
(2)災害発生時の措置
作業現場において災害が発生した場合の対応は、原則として「人命救助」と「二次災害の防止」が優先されます。ただし、被災者の救助にあたる者の安全や、災害の拡大を防止する作業をする者の安全が確保されていることが前提となります。
①第一次措置
a.災害が起きた場所への立ち入り禁止、作業者の退避、機械などの停止を行い、被害の拡大を最小限に抑え、二次災害の発生を防止する。
災害の程度を把握したうえで、人命救助を行う。このとき、救助する場所は安全な場所を選ぶ。
b.必要により救急車を要請後、災害の程度・発生状況を確認し、直属の上司や現場所長等に正確な情報をできるだけ早く報告(第一報)する。
c.救急隊が到着するまでの間、一次救命処置と応急手当を行う。現場で行う応急処置は傷病をそれ以上悪化させないためのもので一時的な措置であるが、被災者の意識がないなどの重大な症状の場合は、一刻も早く処置を行う必要がある。
d.正確な処置ができるように救命救急の知識やAED(自動体外式除細動器)の所在場所・使用方法などを身に付けておく。
★労災かくし
「故意に労働者死傷病報告を提出しないこと」又は「虚偽の内容を記載した労働者死傷病報告を所轄労働基準監督署長に提出すること」をいい、このような労災かくしは適正な労災保険給付に悪影響を与えるばかりでなく、労働災害の被災者に犠牲を強いて自己の利益を優先する行為で、労働安全衛生法第100条に違反し又は同法第120条第5号に該当し、罰則規定の対象となります。
「労災私傷病報告」
船倉内で鉱石の搬出作業中に、作業者1人及び
救助に向かった2人の作業者が酸素欠乏症で死亡
この災害は、製錬所で鉱石運搬船から鉱石を荷揚げする作業中に発生した。
製錬所構内の岸壁(バース)に接岸された鉱石運搬船には第1船倉から第4船倉まで4つの船倉があるが、災害発生時には第1船倉と第3船倉のハッチは全開され、第2船倉と第4船倉のハッチは閉じられていた。朝8時半頃、4人の作業者が、荷揚げする「銅精鉱」を船倉の中央部に掻き寄せるためのドラグ・ショベルに玉掛けし、揚貨装置運転者Gがつり上げて船倉内に降ろそうとしたときに、船倉の昇降口に近い甲板にいた作業者Bから、「船倉が臭いので中に入られん。待っておけ。」と無線連絡があったので待っていた。
しかし、その直後にBから降ろすよう合図があったのでドラグ・ショベルを降ろす作業を開始し、ドラグ・ショベルが銅精鉱の上約1mのところに到達したとき、船倉内の昇降設備下部の踊り場から垂直はしごに乗り移ろうとしていたBが墜落した。
これを見た作業者Cは、無線で事務所に連絡を試みたが応答がなかったので、作業者Dに「Bさんが倒れた。」と大声で連絡した。
このとき、バースにあるアンローダーの運転者Eは、異変に気づき事務所倉庫に1台あった空気呼吸器を取りに行って第3船倉の昇降口に到着した。また、異変を伝え聞いた荷役責任者FとバースにいたAが少し遅れて到着し、二人はBを救助するため船倉内にすぐに降りて行き、Eも空気呼吸器をその場に置いたまま二人の後を追ったが先に入ったFが倒れたので、AとEは甲板上に引き返したのち、鉱石運搬船の船員から手渡された呼吸用保護具を着用して再度船倉内に入った。しかし、Eは体の自由がきかず意識が遠くなっていくような感じがしたため、甲板に引き返して助かったがAは船倉内で倒れた。
原因
1 船倉内が酸素欠乏状態になっていたこと
船倉に積み込まれていた銅精鉱(硫化鉱)には、銅28%、鉄27%、硫黄30%、二酸化ケイ素7%等が含まれており、空気中の酸素を吸収する性質があった。
そのため、鉱石が空気中の酸素を吸収し、換気が不十分だったため船倉内の酸素濃度が18%以下の酸素欠乏状態になっていた。
2 酸素濃度の測定が不適切であったこと
船倉内の空気中の酸素濃度の測定を行った作業者が、適正な測定方法や測定位置等に関しての知識等が不足していたため、船倉内へ降りる昇降口の直下の場所について酸素濃度の測定を実施していなかった。
また、会社が定めた酸素濃度測定の作業標準書には、船倉内の測定点の数、垂直方向及び水平方向の測定点が具体的に示されていなかった。
3 空気呼吸器等の数が不足していたこと
酸素欠乏危険場所における作業で酸素欠乏症等にかかった作業者を救出するために必要な空気呼吸器等の数が、作業に従事する作業者の数に対して不足していた。
また、救出のため船倉内に入った作業者が、空気呼吸器等を使用していなかった。
4 安全衛生教育等が不十分であったこと
酸素欠乏危険場所で作業を行う者に対して、酸素欠乏症等に関する安全衛生教育を十分に行っていなかった。
② 第二次措置
災害発生現場は、災害発生時の緊急措置により状況が変化したり、仕事の再開を急いだりするあまり整理・処分されがちですが、これらは災害調査における重要な証拠となるので、極力立入禁止措置はそのまま継続し災害調査に備えなければなりません。
警察、労働基準監督署の調査立会時、目撃者や職長に対する当日の作業状況などの聞き取りや調書作成に協力します。また、作業計画書や作業手順書等の書類、災害発生状況説明のための見取り図、災害原因となった機械機器のカタログなど関係書類を求められることがあるので、可能であれば準備をしておきます。
なお、被災者を病院に搬送した場合は必ず付添人を配置し、経過の連絡が取れるようにしておきます。
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