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【第1章】第7節 職長等及び安全衛生責任者の役割 2

第7節 職長等及び安全衛生責任者の役割②

(4)安全配慮義務

安全配慮義務の範囲

1)損害賠償請求訴訟の訴因としての安全配慮義務は、本来労働契約に基づく手段債務(その時々にやれる手段を尽くす義務)だが、第2の労災補償として機能してきた面があり、結果責任的に運用される面がある。

2)基本的には契約上の義務だが独自の発展を遂げ、現在では「対象者の安全や健康を左右できる立場にある者(契約関係は不要)が、「災害の予見可能性と回避可能性がある限り、講じられる手段を尽くす義務」として運用されている。
なお、民間雇用関係では資金不足は(不作為の)理由とならない。

3)日本では安全配慮義務が結果責任的に運用されている理由

① 事業者が労働者の使用利益を得ていること。

② 労働者の指揮命令権限、労働条件設定権限を持ち、従って安全管理能力を持つこと。

③ ドイツなどと違い、日本の労災保険制度が限定的性格を持つため、第2の労災補償的な性格を持たざるを得なかったこと。

4)安全配慮義務の実態・外延は必ずしも明確でなく、事案の性格・脈絡などを踏まえた裁判所の心証・総合判断にゆだねられる面が大きいため、予測可能性が立ちにくい。

5)安全配慮義務は労働者側も負担する。

使用者側に何らかの過失が認められれば完全免責を導くことはほとんど無いが、過失相殺の場面では意味を持つ。

・労働者側の過失として賠償額の減額要因とされた例

① 必要な個人情報の不提供

② 自身やその周辺に関する状況報告の懈怠(かいたい・けたい)

③ 治療継続中の自己判断での通院停止

④ 休日や勤務時間外の疲労回復を妨げるような行動

⑤ 勤務時間軽減の工夫の懈怠

損害賠償請求訴訟で事業者側が完全免責を得ることは困難と思われますが、事業者の尽くすべき手段としては以下の事項が挙げられます。

① 努力義務を含む関係法令の遵守

② 行政通達や指針、監督署の指導などの遵守

③ 労働安全衛生マネジメントシステムの導入・実施

④ リスクアセスメントの実施

⑤ 危険予知活動、4S活動などの自主的安全活動

労災による損失の負担割合に関する考え方の変遷

(5)『CSR(Corporate Social Responsibility):企業の社会的責任』

利害関係者に対して説明責任を果たすという基本的な責任から、現在では社会に対する環境保護(保証)、従業員に対する労働安全衛生や人権の確保、地域に対する雇用創出、消費者に対する品質保証、取引先への配慮など、幅広い分野に拡大しています。

そのとらえ方や取り組み方は国や地域によって様々であり、それらの多様性を前提として国際標準化機構がISO 26000(社会的責任)として平成22(2010)年11月にガイドラインを発行。JIS規格では JIS Z 26000 「社会的責任に関する手引」として平成24(2012)年3月に制定されました。


組織の社会的責任

社会的責任の様々な側面は,19世紀後半,場合によってはそれ以前から,組織及び政府による行動の主題となっていたが,社会的責任という用語が広く用いられるようになったのは 1970 年代前半からである。


ほとんどの人々にとって“企業の社会的責任(CSR)”という用語のほうが,いまだに“社会的責任”よりもなじみが深い。実業界の組織だけでなく,様々な種類の組織が,自らも持続可能な発展に寄与する責任を負うと認識するようになり,社会的責任が全ての組織に当てはまるという考え方が出現するようになった。

社会的責任の要素は,ある特定の時期の社会の期待を映し出すものであり,それ故に,絶え間なく変化する。社会の関心が変化するにつれ,組織に対する社会の期待も,それらの関心を映し出して変化する。初期の社会的責任の観念は,慈善事業を行うなどの慈善活動が中心だった。労働慣行及び公正な事業慣行といった主題が登場したのは,一世紀以上前のことである。人権,環境,消費者保護,汚職防止などのその他の主題は,やがてこれらの主題がより大きな注目を集めるにつれ,追加された。この規格で特定される中核主題及び課題は,現時点での優れた実践例の見方を反映したものである。優れた実践例の見方も将来変化するであろうことは疑いなく,更に別の課題が社会的責任の重要な要素とみなされるようになるかもしれない。

引用:Z 26000:2012 (ISO 26000:2010)


 

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