【第三章】 聴覚保護具の使用とその他作業管理
(1)聴覚保護具
作業場の騒音を十分に抑えることが出来ない場合、耳栓やイヤーマフなどの聴覚保護具(防音保護具)を使用します。
聴覚保護具(防音保護具)の選び方
適切な保護具を選ぶために、以下のことを考慮しましょう。
①事業場の騒音レベルに対して、どの程度の遮音性能の保護具が適切か。
②着用感が良く、長時間着用して負担がないか。
聴覚保護具(防音保護具)を選ぶ際は、次の日本産業規格を参考にしましょう。
□JIS T8161 1種(EP-1)低音から高音まで遮音するもの
2種(EP-2)主として高音を遮音、会話域の低音は比較的通す
イヤーマフ(耳覆い)は(EM)
※防音保護具が「聴覚保護具」に変わります。
これまで使用されてきた防音保護具の名称が「聴覚保護具」に変更されます。※2023 年 7 月までに変更予定
旧規格の製品規格から、新規格は「方法規格」となります。
新規格は、国際規格(ISO 4869-1:2018、ISO 4869-2:2018)との整合性を主眼に制定されており、JIS T 8161-1 で遮音値の測定方法を定め、JIS T 8161-2 で聴覚保護具の着用時の実効 A 特性重み付け音圧レベル(正しく装着した時に 聞こえる音の大きさ)の推定について記載しております。この JIS の制定によって、使用者が正しく遮音性能を製品間で比較することができ、その結果、職場に適した聴覚保護具の選定が可能になります。
(2)耳栓のつけ方
耳の穴は中に進むにつれS字状に曲がっています。耳栓をいれる耳の反対側の手で耳たぶをひっぱりあげて、耳の穴をまっすぐにしてから入れましょう。
これは大切なことで、曲がったままで耳栓をつけるときちんと耳の穴を覆うことができません。耳栓を正しくつけた状態でないと音を遮断する効果は期待できません。作業中にはずれたりすることなく正しい状態が続くように装着することが大切です。
最後は口を開閉して耳栓による痛みや緩みがないか確認しましょう。
(3)聴覚保護具の使用その他の作業管理
①作業方法等の継続的な管理
騒音ばく露低減のための措置を講じても、なお等価騒音レベルが 85 dB 未満とならない場合は、騒音源に近づく作業に着目して作業方法の改善を行うなど、騒音障害防止対策の管理者の指示の下で作業管理を適切にかつ継続的に行います。
②有効な聴覚保護具の使用
騒音ばく露低減のための措置を講じても等価騒音レベルが 85 dB 未満とならない場合は、作業環境測定結果又は個人ばく露測定等により把握した騒音レベルに応じて有効な聴覚保護具を選定し、対象となる労働者に使用させます。
有効な聴覚保護具の選定は、日本産業規格 JIS T8161-1 に規定する試験方法により測定された遮音値を目安とし、必要かつ十分な遮音値のものを選定するよう留意します。
また、危険作業等において安全確保のために周囲の音を聞く必要がある場合や会話が必要な作業の場合においては、遮音値が必要以上に大きい聴覚保護具を選定してはいけません。
(4)健康診断
別表第1及び別表2の作業場における作業に常時従事する作業者に対し健康診断を行ってください。
(5)聴覚保護具の装着確認
等価騒音レベルが 90 dB 以上の強烈な騒音を発する場所における業務に従事する労働者や、騒音健康診断の結果要観察とされた労働者については、当該労働者の騒音ばく露を等価騒音レベル 85 dB 未満とするよう、騒音障害防止対策の管理者が聴覚保護具の正しい装着方法などを指導します。
(6)作業時間の管理
騒音ばく露低減のための措置、作業方法の改善及び聴覚保護具の使用によっても当該労働者の騒音ばく露が等価騒音レベル 85 dB 以上となるときは、1日の騒音作業に従事する時間を制限することにより、1日騒音ばく露量を 85 dB 未満とする必要があります。
(7)騒音レベルに応じた措置
(8)騒音健康診断
イ 雇入時等健康診断
事業者は、騒音作業に常時従事する労働者に対し、その雇入れの際又は当該業務への配置替えの際に、次の項目について医師による健康診断を行うこと。ただし、当該労働者の等価騒音レベルが常に 85 dB 未満であることが明らかであるときは、この限りではありません。
① 既往歴の調査
② 業務歴の調査
③ 自覚症状及び他覚症状の有無の検査
④ オージオメータによる 250、500、1,000、2,000、4,000、6,000、8,000ヘルツにおける聴力の検査
⑤ その他医師が必要と認める検査
ロ 定期健康診断
事業者は、騒音作業に常時従事する労働者(1日騒音ばく露量が等価騒音レベル 85 dB 未満とされた者を除く。)に対し、6月以内ごとに1回、定期に、次の項目について、医師による健康診断を行います。
① 既往歴の調査
② 業務歴の調査
③ 自覚症状及び他覚症状の有無の検査
④ オージオメータによる 1,000 ヘルツ及び 4,000 ヘルツにおける選別聴力検査 (1,000 ヘルツについては 30dB、 4,000 ヘルツについては 25dB及び 30dB の音圧の純音が聞こえるかどうかの検査)
事業者は、上記の健康診断の結果、30dB の音圧での検査で異常がみられた者その他医師が必要と認める者について、次の項目について医師による健康診断を行います。
① オージオメータによる 250,500,1、000,2,000、4,000、6,000、8,000 ヘルツ における聴力の検査
② その他医師が必要と認める検査
(9)健康管理区分の決定
事業者は、聴力検査の結果に基づき、気導純音聴力レベルを求め、次のとおり健康管理区分を決定します。ただし、選別聴力検査の結果、30dB の音圧での検査で異常がみられなかった者はこの限りではありません。
【聴力検査】
純音聴力検査とは、聴力レベルと難聴の種類(伝音性、感音性、混合性)を検討する検査です。
気導聴力は、耳にレシーバーを当て、鼓膜を通して音(空気振動)を与え、聴覚域値(音の聴こえ始め)を測定する自覚検査です。
骨導聴力は、耳の後の側頭骨部に骨導子を当て、振動(音)を骨を通して直接内耳に与え聴覚域値を測定します。
(10)健康診断結果に基づく事後措置
事業者は、健康診断の結果に応じて、次に掲げる措置を講じます。
①前駆期の症状が認められる者及び軽度の聴力低下が認められる者に対しては、屋内作業場にあっては第2管理区分及び第3管理区分に区分された場所、屋内作業場以外の作業場にあっては等価騒音レベルで 85 dB 以上の作業場において、聴覚保護具を適切に使用させることにより、当該労働者の騒音レベルを 85 dB 未満とするよう努めます。
②中等度以上の聴力低下が認められ、聴力低下が進行するおそれがある者に対しては、騒音作業に従事する間、聴覚保護具を適切に使用させることにより、当該労働者の騒音レベルを等価騒音レベル 85 dB 未満かつ可能な限り低減させるよう努めます。また、必要に応じ、騒音作業に従事する時間の短縮、配置転換等により、騒音ばく露を抑制します。
(11)健康診断結果の記録と報告 (定期健康診断後6月経過離職時も)
事業者は、雇入時等又は定期の健康診断を実施したときは、その結果を記録し、5年間保存します。 また、定期健康診断については、実施後遅滞なく、その結果を所轄労働基準監督署長に報告します。
(12)労働衛生管理体制とリスクアセスメント
原則として、作業場ごとに騒音障害防止対策の管理者を定めて組織的かつ継続的に対策を実施します。当該管理者は、主としてライン管理者、職長等の実務に習熟した者が該当しますが、事業場の規模に応じて、事業場全体を統括する者との連携も重要です。 また、これら騒音障害防止対策の管理者は、騒音レベルを把握して騒音障害リスクを見積もった上で、リスクに応じて設備や作業方法等を踏まえた必要な措置を選択して対策を講じます。なお、建設工事現場等においては、元請事業者は関係請負人が行う労働者の労働衛生管理、労働衛生教育等が適切に行われるよう、指導・援助を行う必要があります。
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