現地KY
さて、次は現地KYという方法です。これは文字通り作業現場で作業開始前に行う実践的なKY活動であり、作業チーム単位で行うものです。作業現地で、現物を見ながら、現実に即した形でKY活動を行うことにしたものです。現地KYを行うのには、以下のような理由があります。
- 実際の作業が始まる直前に現地で現物・現状を見ながら行うことで、より実態に即した内容となることを期待できる。
- 一日の中で作業場所や内容が変わり、危険要因、有害性も変わる。その度に確認するべきである。
- 作業開始前の意識付けとして適している。
さらに現場に即したいくつかの要点があります。
まずはテーマを絞り込むこと。そして危険のポイントと行動目標を明確にさせることです。
また、短い時間で重要ポイントを洗い出し、終了すること、必ず振り返りを行うことも大切になってきます。
作業前に現地KYを行うことで、頭を切り替えることができますし、作業開始前に危険を発見することが可能になりますから、危険を避けることもできます。
それでは実際の作業の中において、どんな危険があるかを考えていきます。
【危険のポイント】
リーダーの問いかけ 「今日の作業の中でどんな危険があるかな?」
メンバーの意見
・足場作業があるので転落する危険がある
・重い物を持ち上げるときに腰痛になる可能性がある
・丸ノコを使う際に、誤って手を切る危険がある
意見が出た中で、最も危険度が高いものを参加者全員で決め、危険のポイントとします
今回は「足場作業で転落する」にしました。
そこで、これに対する今日の行動目標を皆で考え、「安全帯をしよう」ということになりました。
【行動目標】
行動目標 → 「足場作業のときは安全帯をしよう、ヨシ!」
指差し呼称 → 「安全帯ヨシ!」
これで現地KYは完了ということですが、危険のポイントは「~するとき~なので~になる」などの表現を用い、危険な場面がありありと目に浮かぶような具体的なものが望まれます。
実は上の例は場面設定が曖昧で「どんな場面で何をすればよいのか」よくわからない、典型的な失敗例です。
どうしてそうなったのかというと、最初の問いかけが「今日の作業の中で・・・」という漠然とした広い範囲になっているからです。
例えば、「巻き上げ機を使って3階の足場に材料を荷揚げするときの危険について」などと、具体的な場面提示が望まれます。
そうすると、単に「足場から落ちる」のではなく、「資材を早く受け取ろうと足場の隙間から身を乗り出し過ぎるので落ちる」というような、「ありありと目に浮かぶ」表現がしやすくなります。結果「それ、あるある!」と、共感を呼びやすくなり、楽しく進めることもできますし、自分のこととして身近に感じられます。
また、展開によっては「行動目標」も違ったものになるかもしれません。
例えば「安全帯をしよう」ではなく、「資材を受け取るときは足場の手すりより上で受け取ろう」ということになるかもしれません。
ポイントとして、まずリーダーは具体的な作業場面を想定して提示するよう心掛けましょう。
- (例2)基礎配筋作業を行うため鉄筋の荷下ろしをする際の現地KY
-
予測される危険として次の意見が出ました。
- トラックを間口の狭い敷地にバックで入ろうとして、車を塀に当てないよう運転作業に気をとられ、作業者に気づかずぶつかる
- 時間に追われると急いで下ろそうと思い、クレーンのブームを早く動かすので反動で鉄筋束がずれて落下し、作業者に当たる
- 玉掛け者が積み荷から遠ざかろうと荷を見ながら後ずさりしたため、鉄筋束に足を取られてよろけ、荷台から落下する
危険のポイントは、鉄筋束がずれて落下し作業者に当たるということにしました。
そこで、対策となる行動目標を考えます。
- ゆっくりと動かす
- 鉄筋束が落ちてもけがをしないように人払いをする
- 必ずあだ巻きをする
- 介錯ロープで誘導する
- 「鉄筋おろします」と声掛けする
行動目標は、鉄筋を下ろすときは声がけし、介錯ロープで誘導することに決まりました。「鉄筋束をおろすときは声掛けして、介錯ロープで誘導しよう、ヨシ!」と唱和します。
「まず鉄筋おろします」と声を掛けて、全員が聞いたのを確認してから「声掛け、誘導、ヨシ!」となりました。
作業のどのタイミングで指差し呼称をするのかを全員で確認し、徹底しましょう。
(例2)では(例1)よりも具体的な作業場面が指定されています。場面が具体的になり、自分のこととして連想できるようになったことで、危険のポイントやつかみ方がより具体的になりました。
「この作業のこの手順について」「この作業のこの行動について」とテーマを限定することが、短時間でKYを実践するコツとなります。
さらに対象となる作業終了後や一日の全体作業終了後など、必ず振り返りを行いましょう。
設定したKYのテーマはどうだったか、行動目標は守れたか。
大きな事故はなかったが、もう少しでケガにつながるようなこと、危ないと感じたこと、いわゆる「ヒヤリハット」はなかったか・・・
たくさんの振り返りを行うことこそ、KY活動の充実につながります。
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