第1章 ダイオキシン類の有害性①
第1節 ダイオキシン類の性状
(1)PCDD、PCDF及びコプラナーPCBを指します
一般に、ポリ塩化ジベンゾ-パラ-ジオキシン(PCDD)とポリ塩化ジベンゾフラン(PCDF)、をまとめてダイオキシン類と呼び、コプラナーポリ塩化ビフェニル(コプラナーPCB、またはダイオキシン様PCBとも呼ばれています。)のようなダイオキシン類と同様の毒性を示す物質をダイオキシン類似化合物と呼んでいます。
平成11年7月16日に公布されたダイオキシン類対策特別措置法においては、PCDD及びPCDFにコプラナーPCBを含めて“ダイオキシン類”と定義されました。そこで、このテキストでは、PCDD及びPCDFにコプラナーPCBを含めて、「ダイオキシン類」ということにします。
ダイオキシン類は図1のように、基本的には炭素で構成されるベンゼン環(図1の六角形の部分)2つが、酸素(図1のO)で結合したりして、それに塩素が付いた構造をしています。図1の1~9及び2’~6’の位置には塩素又は水素が付いていますが、塩素の数や付く位置によっても形が変わるので、(異性体、同族体)PCDDは75種類、PCDFは135種類、コプラナーPCBは10数種類の仲間があります。
図1
(2)ダイオキシン類全体の毒性の強さは毒性等量(TEQ)で表します
ダイオキシン類は、毒性の強さがそれぞれ異なっています。
そのため、ダイオキシン類としての全体の毒性を評価するためには、合計した影響を考えるための手段が必要です。そこで、最も毒性が強い2,3,7,8-TeCDDの毒性を1として他のダイオキシン類の仲間の毒性の強さを換算した係数が用いられています。
多くのダイオキシン類の量や濃度のデータは、この毒性等価係数(TEF:ToxicEquivalencyFactor)を用いてダイオキシン類の毒性を足し合わせた値(通常、毒性等量(TEQ:ToxicEquivalent)という。)が用いられています(表1)。本テキストでは、ダイオキシン類の濃度などは全てこのTEQで表現しています。
(3)無色で水に溶けにくい性質があります
ダイオキシン類は、通常は無色の固体で、水に溶けにくく、蒸発しにくい反面、脂肪などには溶けやすいという性質を持っています。また、ダイオキシン類は他の化学物質や酸、アルカリにも簡単に反応せず、安定した状態を保つことが多いのですが、太陽光の紫外線で徐々に分解されるといわれています。
※水に溶けにくい⇒食物に含まれ、体に取り込みやすい
※脂肪に溶けやすい⇒皮膚から吸収しやすく、肝臓等に溜まりやすい
(4)ごみ焼却のほか、様々な発生源から副生成物として発生します
ダイオキシン類は分析のための標準品の作製などの研究目的で作られる以外には、意図的に作られることはありません。ダイオキシン類は、炭素・酸素・水素・塩素を含む物質が熱せられるような過程で自然にできてしまう副生成物です。
※様々な物質⇒熱分解⇒原子がバラバラ⇒再結合⇒ダイオキシン類
必用な原子は「炭素」「塩素」「酸素」「水素」
ダイオキシン類の現在の主な発生源は、ごみ焼却による燃焼ですが、その他に、製鋼用電気炉、たばこの煙、自動車排出ガスなどの様々な発生源があります。
ダイオキシン類は、主としてものを燃やすところから発生し、処理施設で取りきれなかった部分が大気中に出ます。また、かつて使用されていたPCBや一部の農薬に不純物として含まれていたものが底泥などの環境中に蓄積している可能性があるとの研究報告があります。
環境中に出た後の動きの詳細はよくわかっていませんが、例えば、大気中の粒子などにくっついたダイオキシン類は、地上に落ちてきて土壌や水を汚染し、また、様々な経路から長い年月の間に、底泥など環境中に既に蓄積されているものも含めて、プランクトンや魚介類に食物連鎖を通して取り込まれていくことで、生物にも蓄積されていくと考えられています。
我が国におけるダイオキシン類の平成22年の年間排出量は、約158~60g-TEQであると推計されています。
また、ダイオキシン類は、自然界でも発生することがあり、例えば、森林火災、火山活動等でも生じるといわれています。
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