【第2章】第3節 ランヤードの取付け設備等への取付け方法及び選定方法①
1.ランヤードの選定
1.ショックアブソーバの選定
- 腰の高さ以上にフック等を掛けて作業を行うことが可能な場合には、第一種ショックアブソーバを選定します。
- 鉄骨組み立て作業等において、足下にフック等を掛けて作業を行う必要がある場合は、フルハーネス型を選定するとともに、第二種ショックアブソーバを選定します。
- 両方の作業を混在して行う場合は、フルハーネス型を選定するとともに、第二種ショックアブソーバを選定します。
(第二種ショックアブソーバは6kNの規格であり、胴ベルトには適さないため「フルハーネス型を選定・・・」と規定している。)
なお、ワークポジショニング作業においては、通常、足下にフック等を掛ける作業はないため、第一種ショックアブソーバを選定します。
ただし、作業内容に足下にフック等を掛ける作業が含まれる場合は、第二種ショックアブソーバを選定することになります。
2.体重等に応じた器具の選定
墜落制止用器具には、使用可能な最大質量(85kg 又は 100kg。特注品 を除く。)が定められているので、器具を使用する者の体重と装備品の合計の質量が使用可能な最大質量を超えないように器具を選定します。
3.作業場所の高さや業務の内容に応じた器具の選定
- ランヤードに表示された標準的な条件の下における落下距離を確認し、主に作業を行う箇所の高さに応じ、適切なランヤードを選定します。
- ロック機能付き巻取り式ランヤードは、通常のランヤードと比較して落下距離が短いため、主に作業を行う箇所の高さが比較的低い場合は、使用が推奨されます。
- 移動時のフック等の掛替え時の墜落を防止するため、二つのフック等を交互に連続使用する方法(二丁掛け・ダブルランヤード)が望ましい。
- フルハーネス型で二丁掛けを行う場合、二本の墜落制止用のランヤードを使用します
※二丁掛用(ダブルランヤード)のショックアブソーバは、フックの掛け方によっては機能しない恐れがあるので注意が必要です。
【ショックアブソーバが十分機能しない恐れを示した絵表示(海外メーカーの例)】
- 二丁掛けを行う場合、2本の墜落制止用のランヤードを使用することが望ましいが、二本のうち一本は、ワークポジショニング用のロープを使用することも認められること。
この場合、伸縮調整器により、必要最小限のロープの長さで使用します。
2.墜落制止用器具の取付け設備
- ランヤードが外れたり、抜けたりするおそれのないもので、墜落制止時の衝撃力に対し十分耐え得る堅固なものであること。
取付け設備の強度が判断できない場合には、フック等を取付けないこと。
作業の都合上、やむを得ず強度が不明な取付け設備にフック等を取付けなければならない場合には、フック等をできる限り高い位置に取付ける等により、取付け設備の有する強度の範囲内に墜落制止時の衝撃荷重を抑える処置を講じます。
- 墜落制止用器具の取付け設備の近傍に鋭い角がある場合には、ランヤードのロープ等が直接鋭い角に当たらないように、養生等の処置を講じます。
3.墜落制止用器具の使用方法(ワークポジショニング作業を伴わない場合)
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フックは墜落時の衝撃を抑えるために、腰より上の高い所に取り付けます。
また、フックをかける対象物は、墜落阻止時の衝撃に十分耐えうる強度を持つものを選んでください。
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フックはまっすぐ下向きで取り付けます。
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垂直構造物や斜材等に取り付ける場合は、墜落制止時にランヤードがずれたり、こすれたりしないようにします。
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墜落制止用器具は、可能な限り、墜落した場合に振子状態になって物体に激突しないような場所に取り付けます。
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補助ロープは、移動時の掛替え用に使用するものであり、作業時には使用しないようにします。
4.墜落制止用器具の使用方法(ワークポジショニング作業を伴う場合)
取付け設備は、原則として、頭上の位置のものを選びます。
垂直構造物や斜材等に取り付ける場合は、墜落制止時にランヤードがずれたり、こすれたりしないようにします。
ワークポジショニング用器具は、ロープによじれのないことを確認したうえで、フック等が環に確実に掛かっていることを目視により確認し、伸縮調節器により、ロープの長さを作業上必要最小限の長さに調節し、体重をかけるときは、いきなり手を離して体重をかけるのではなく、徐々に体重を移し、異状がないことを確かめてから手を離します。
ワークポジショニング用ロープは、移動時の掛替えの際に墜落防止用として使用できますが、作業時には、別途、墜落制止用器具としての要件を満たす別のランヤードを使用して作業を行う必要があります。
ワークポジショニング用ロープを掛替え時に使用する場合は、長さを必要最小限とします。
5.フック等の使用方法
フック等はランヤードのロープ等の取付け部とかぎ部の中心に掛かる引張荷重で性能を規定したものであり、曲げ荷重・外れ止め装置への外力に関しては大きな荷重に耐えられるものではないことを認識したうえで使用します。
回し掛けは、フック等に横方向の曲げ荷重を受けたり、取付け設備の鋭角部での応力集中によって破断したりする等の問題が生じるおそれがあるので、できるだけ避けます。
回し掛けを行う場合には、これらの問題点をよく把握して、それらの問題を回避できるように注意して使用します。ランヤードのロープ等がねじれた状態でフック等の外れ止め装置に絡むと外れ止め装置が変形・破断して外れることがあるので、注意します。
ランヤードのフック等の取付け部にショックアブソーバがある形状のものは、回し掛けをしてフック等がショックアブソーバに掛かるとショックアブソーバが機能しないことがあるので、回し掛けしないようにします。
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