【第3章】第2節 労働災害はなぜ起きるのか?
1.災害分析の結果から
一般にほとんどの労働災害の直接原因は「不安全行動」と「不安全状態」と分析されています。
ビル10階の事務所内で働いている人が室内を少々ぼんやり歩いていても、床があるので下の階に墜落することはありません。
この場合墜落に関しては「不安全状態」が存在しないので、落ちようと思っても落ちません。
では、同じ10階のフロアでも建設中だったらどうでしょう?
例えば、鉄骨の上では2丁掛け式(ダブルランヤード式)を使用し、無胴綱状態が生じないように作業をされていると思います。
こちらははっきりした墜落の危険という「不安全状態」が認められますので、安全対策としてそういうルールにしているわけです。
(もちろん安全ネットも張っていると思いますが)
こういった場合に、例えば墜落制止用器具(安全帯)やヘルメットを装着しないで鉄骨上で作業することや、どこにもフックを掛けずに無胴綱状態で移動することなどは「不安全行動」と言っていいでしょう。
「不安全状態」と「不安全行動」が同時に存在すると、事故や災害の発生を招きやすくなる、ということはご理解いただけると思います。
また、どちらか一方でも減らすことが出来れば、災害は減らせるはずです。
安全化 ➡ 現場の「不安全な状態」や
「不安全な行動」を減らしていくこと
2.人間が判断を誤るから労働災害が発生する
災害分析からは確かに「不安全状態」と「不安全行動」がポイントなのですが、前述の例にもあるように、特に建設業において「不安全状態」を減らすことは実際問題として容易ではありません。
工程の進捗上やむを得ず危険と向き合わなければ作業できないことや、季節や天候に左右されるといった外的要因にも影響されます。
そこで、ここではもう一方の要因、「人の行動」に着目してみたいと思います。
- ■移動しようと考え、「自分は大丈夫」(判断)だからと近道(行動)すると労働災害の発生確率が高くなります。
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■一般的には「不安全行動」が労働災害発生の一因といいますが、実際はその前に必ず法令違反やルール違反を許す心が存在しています。(誤った判断)
「法律や規則を守らない」
「事業所のルールを守らない」
「自分勝手な解釈」
これらを許す心がある限り、労働災害が発生していきます。 - ■また、悪気がない「うっかり」「ぼんやり」「勘違い」という人間らしさも労働災害発生の要因となってはいますが、全体に占める割合はそれほど大きくないと考えられています。
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■機械設備、物の異常(不安全状態)も労働災害発生の要因ですが、「作業開始前点検」を「めんどくさい」「大丈夫」だといって適切に行わないことが更に要因となっています。
巡視時の点検も適切に行わなければ意味がありません。結局、「不安全状態」も人間が引き起こしている割合が高いと考えられます。 -
■管理が不十分だと、「不安全行動」や「不安全状態」が起きやすくなります。
しかし、その管理も人間の思考と判断・行動なので、結論は『人間が正しい判断をしたうえで、正しい行動をしなければ労働災害は発生してしまう』という事になります。
【めんどうくさい、自分は大丈夫】
これを捨てることが出来れば多くの労働災害を防ぐことができる!
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