【第3章】 労働災害の発生プロセス①
1.厚生労働省モデル
労働安全衛生法では、労働災害について「労働者の就業に係る建設物、設備、原材料、ガス、蒸気、粉じん等により、又は作業行動その他業務に起因して、労働者が負傷し、疾病にかかり、又は死亡することをいう。」と定義されています。
なお、災害は現象面でとらえると物だけ、あるいは人だけが原因で起こる場合もありますが、大部分は「機械設備・物」の不安全な状態と「人」の不安全な行動が異常接触して発生するといわれています。
2.現象(事故の型)
厚生労働省(旧労働省)で昭和47年に公表された、事故の型および起因物分類において用いられている用語で、「傷病を受けるもととなった起因物が関係した現象」と定義されています。物と人との組み合わせによる接触現象が「事故の型」です。
この分類における事故の型は、墜落・転落、飛来・落下等の21分類から構成されています。
現象(事故の型):墜落する。転倒する。激突する等(簡易な表現可)
結果(重篤度):怪我。打撲。骨折。死亡等。
3.事故の型(数字は区分番号)
■01墜落、転落
人が樹木、建築物、足場、機械、乗物、はしご、階段、斜面等から落ちることをいう。乗っていた場所がくずれ、動揺して墜落した場合、砂ビン等による蟻地獄の場合を含む。車輌系機械などとともに転落した場合を含む。交通事故は除く。感電して墜落した場合には感電に分類する。
■02転倒
人がほぼ同一平面上でころぶ場合をいい、つまずきまたはすべりにより倒れた場合をいう。車輌系機械などとともに転倒した場合を含む。交通事故は除く。感電して倒れた場合には感電に分類する。
■03激突
墜落、転落および転倒を除き、人が主体となって静止物または動いている物にあたった場合をいい、つり荷、機械の部分等に人からぶつかった場合、飛び降りた場合等をいう。車輌系機械などとともに激突した場合を含む。交通事故は除く。
■04飛来・落下
飛んでくる物、落ちてくる物等が主体となって人にあたった場合をいう。研削といしの破片、切断片、切削粉等の飛来、その他自分が持っていた物を足の上に落とした場合を含む。容器等の破裂によるものは破裂に分類する。
■05崩壊・倒壊
堆積した物(はい等も含む)、足場、建築物等がくずれ落ちまたは倒壊して人にあたった場合をいう。立てかけてあった物が倒れた場合、落盤、なだれ、地すべり等の場合を含む。
■06激突され
飛来落下、崩壊、倒壊を除き、物が主体となって人にあたった場合をいう。つり荷、動いている機械の部分などがあたった場合を含む。交通事故は除く。
■07はさまれ・巻き込まれ
物にはさまれる状態および巻き込まれる状態でつぶされ、ねじられる等をいう。プレスの金型、鍛造機のハンマ等による挫滅創等はここに分類する。ひかれる場合を含む。交通事故は除く。
■08切れ・こすれ
こすられる場合、こすられる状態で切られた場合等をいう。刃物による切れ、工具取扱中の物体による切れ、こすれ等を含む。
■09踏み抜き
くぎ、金属片等を踏み抜いた場合をいう。床、スレート等を踏み抜いたものを含む。踏み抜いて墜落した場合は墜落に分類する。
■10おぼれ
水中に墜落しておぼれた場合を含む。
■11高温・低温のものとの接触
高温または低温の物との接触をいう。高温または低温の環境下にばく露された場合を含む。
〔高温の場合〕火炎、アーク、溶融状態の金属、湯、水蒸気等に接触した場合をいう。炉前作業の熱中症等高温環境下にばく露された場合を含む。
〔低温の場合〕冷凍庫内等低温の環境下にばく露された場合を含む。
■12有害物との接触
放射線による被ばく、有害光線による障害、CO中毒、酸素欠乏症ならびに高気圧、低気圧等有害環境下にばく露された場合を含む。
■13感電
帯電体にふれ、または放電により人が衝撃を受けた場合をいう。
〔起因物との関係〕金属製カバー、金属材料等を媒体として感電した場合の起因物は、これらが接触した当該設備、機械装置に分類する。
■14爆発
圧力の急激な発生または開放の結果として、爆音をともなう膨張等が起こる場合をいう。破裂を除く。水蒸気爆発を含む。容器、装置等の内部で爆発した場合は、容器、装置等が破裂した場合であってもここに分類する。
〔起因物との関係〕
容器、装置等の内部で爆発した場合の起因物は、当該容器装置等に分類する。容器、装置等から内容物が取り出されまたは漏えいした状態で当該物質が爆発した場合の起因物は、当該容器、装置に分類せず、当該内容物に分類する。
■15破裂
容器、または装置が物理的な圧力によって破裂した場合をいう。圧かいを含む。研削といしの破裂等機械的な破裂は飛来落下に分類する。
〔起因物との関係〕
起因物としてはボイラー、圧力容器、ボンベ、科学設備等がある。
■16火災
〔起因物との関係〕
危険物の火災においては危険物を起因物とし、危険物以外の場合においては火源となったものを起因物とする。
■17交通事故(道路)
交通事故のうち道路交通法適用の場合をいう。
■18交通事故(その他)
交通事故のうち、船舶、航空機および公共輸送用の列車、電車等による事故をいう。公共輸送用の列車、電車等を除き、事業場構内における交通事故はそれぞれ該当項目に分類する。
■19動作の反動・無理な動作
上記に分類されない場合であって、重い物を持ち上げて腰をぎっくりさせたというように身体の動き、不自然な姿勢、動作の反動などが起因して、すじをちがえる、くじく、ぎっくり腰およびこれに類似した状態になる場合をいう。バランスを失って墜落、重い物をもちすぎて転倒等の場合は無理な動作等が関係したものであっても、墜落、転倒に分類する。
■90その他
上記のいずれにも分類されない傷の化膿、破傷風等をいう。
■99分類不能
分類する判断資料に欠け、分類困難な場合をいう。
4.起因物
(1)起因物とは、災害をもたらす元となった機械、装置もしくはその他の物または環境。
(2)災害発生にあたっての主因であり、なんらかの不安全な状態が存在するものを選択。
①操作または取扱いをした物(墜落等の場合は作業面)
②加害物
③起因物
〔注〕
起因物(災害をもたらす元となったもの)と加害物(災害をもたらした直接のもの)とは同一になる場合が多いが、異なる場合もあることに留意のうえ選択する。
特に説明で指示されている場合のほか、2種以上の起因物が競合している場合ならびに起因物をきめる判断に迷う場合には、災害防止対策を考える立場で重要度で決めるものとし、なお判断がしがたい場合は、分類番号の大分類について若い番号を優先し、以下中分類および小分類においてもそれぞれ若い番号を優先する。
加害物が溶接装置のように機械、装置等の一部と一体となって動くもの等の場合は、特に説明に指示されている場合のほか、当該機械、装置等を選択する。
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