【第3章】 労働災害の発生プロセス②
5.労働災害とは
労働災害とは、労働者が事業主の管理下にあるときに業務を原因として被った災害のことで、ここでいう災害とは、負傷・疾病・障害・死亡を指しています。
労働安全衛生法第2条(定義)
第2号
労働災害 労働者の就業に係る建設物、設備、原材料、ガス、蒸気、粉じん等により、又は作業行動その他業務に起因して、労働者が負傷し、疾病にかかり、又は死亡することをいう。
※昭和48年(1973年)より通勤災害が労働者災害補償保険(以下「労災保険」という。)の保険事故とされ、一定範囲の通勤事故による被災についても補償の対象となった。
なお、通勤災害は労働安全衛生法で定める労働災害ではないため労働者死傷病報告の対象ではない。
6.不安全状態と不安全行動
不安全行動とは、「知っているのにやらない」「出来るのにやらない」など法令や事業所のルールを守らない行動をいいます。
労働安全衛生法令上では「確信(故意)犯」という扱いになりますので、万が一労働災害が発生し被災者になった場合でも法令違反で処分を受ける可能性がありえます。
「うっかり」「ぼんやり」「勘違い」が原因で起きる労働災害もありますが、それらは「過失」という扱いになるでしょう。
労働災害の95%は不安全状態と不安全行動が重なって起きている
不安全な状態のみ 2~3%程度
不安全な行動のみ 2~3%程度
(1)不安全な状態
①防護装置・安全装置の欠陥
②物の置き方
③作業場所の欠陥
④保護具・作業服装の欠陥
⑤作業環境の欠陥
⑥自然環境
⑦作業方法の欠陥
※機械・設備・物の異常、急激な環境変化
(2)不安全な行動
①安全装置等を無効にする
②安全措置義務不履行
③不安全な状態を黙認
④機械・設備等の用途外使用
⑤保護具の未着用
⑥危険な場所への接近
※法令やルールを守らない、リスクテイキング
労働災害の多くは不安全状態と不安全行動の重なる状態で発生!
7.「不安全」
ハインリッヒの法則から説明すると、『1件の大きな事故の背景には29件の軽微な事故があり、さらにその背景には300件のヒヤリハットが存在する』と言うことが出来ます。※もちろん数字は統計学上のイメージです。
また、ヒヤリハットの下には数千件の「不安全行動」や「不安全状態」が存在すると示しています。この事から、数千の「不安全」を見逃すことなく潰していけば1件の大きな事故は起きなくなるという理屈が成立します。
職長等の現場監督者に「小さな異常(不安全)を見逃さないようにと指導する理由はここにあります。現場巡視や点検は「不安全」を発見し、止めろ、是正しろという意味になりますね。
ハインリッヒの法則
事故分析からの統計であり予測値なので必ずこのような数字になるとは限りません。
さらに数千の「不安全」が存在する←減らせば重大事故が起きない!
労働安全は「不安全」に気付け、見逃すな、解決させること
8.危険予知とは
労働災害発生の原因の多くが「不安全行動」と「不安全状態」ならば
作業を始める前にそれらを事前に予測して、あらかじめ対策を決めておけば労働災害発生の多くを防ぐことが出来そうです。
危険予知は「不安全行動」と「不安全状態」を事前に予測し、前もって対策を行動目標として決めておく安全衛生活動といえます。
なぜ対策が行動目標なのか
危険予知は直後の作業に対して行うので、その場で出来ることが限られます。
機械や設備での対策が難しいので人の行動面に頼ることになります。
労働災害はくり返し型と言われます。
今日誰かが怪我をしたり、職業性の病気になったとしても、災害事例を調べれば過去に同じ原因で同じ怪我や病気になっていた人が多くいるはずです。
建設業などでは「またか・・・」といわれてしまう理由です。
危険予知はゼロから何かを想像するのではなく過去の災害事例からヒントをもらってくることでもあります。
「丸のこを使って板を切るときに使いにくいので安全カバーを動かないように固定してしまうと反発したときに足を切る」
危険予知でよくある「どんな危険がありますか」という回答(想像)ですが
このような理由で過去に被災した人がすごく多いということでもあります。
もう一つ、危険予知に役立つアイテムが作業手順書です。
適切な作業手順書には、作業を進めるための手順と必要な補足(要領、要点とも表現。手順だけではわからない「安全」「成否」「やりやすさ」)がありますが、ここの「安全」について確認、共通認識を持つことが危険予知の前提になります。
「手順書にはこの手順では〇〇をする時は〇〇するとあるけどみんな大丈夫だよね。じゃぁ手順書にない危険性を考えてみようか」
手順書があれば危険予知は効果的に実施することが出来ます。
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