【第4章】第2節 事故の場合の処置
1 事故を防ぐために
(1)作業開始前の測定
作業場所に入る前に、酸素濃度18%以上、硫化水素濃度10ppm以下であることを確かめなければなりません。そのために有効に機能する測定機器を準備し、正しい方法で測定を実施します。また、その記録は3年間保存しなければなりません。
(2)十分な換気
測定結果により酸素欠乏危険場所又は硫化水素濃度危険場所と判明した場合は、安全な濃度になるように換気します。測定時に安全な濃度であっても濃度は変化することがあるため、換気を継続します。
(3)呼吸用保護具の使用
換気ができない場合や不十分な場合は空気呼吸器等を使用することになりますが、これら保護具の取扱い方法も事前に教育訓練を実施しておかなければなりません。
(4)作業指揮と特別教育
酸素欠乏・硫化水素中毒危険作業を実施するためには、技能講習を修了した者から作業主任者を選任すること、従事者は特別教育を修了していることが事業者に義務付けられています。十分な知識と経験を有する作業指揮が要求され、作業者各自も危険有害要因についての知識と正しい作業手順の遵守、及び非常時の避難や被災者の救助の方法など教育訓練の実施が必要です。
(5)事故事例
これまでの事故事例をみると、作業開始前の酸素濃度及び硫化水素濃度の測定の不実施、作業中の換気の不十分、異常時の見過ごしなどが挙げられます。また、事故発生時に作業主任者への連絡の不実施が原因で災害に至ったケースや事故を発見した作業者が被災者救助のために慌てて空気呼吸器や安全帯等保護具を着用せずに酸素欠乏硫化水素危険場所に入り、二次災害となったケースも少なくありません。このことからも、先述したように非常時の対処方法について十分な訓練を実施しておく必要があるといえます。
2 異常の場合の対処
(1)異常の原因
換気が十分に行われていると思い込んでいても、換気装置の故障や換気設備の能力不足、酸素欠乏空気の流入又は硫化水素の新たな発生、設備機械の誤操作による窒素、炭酸ガス等の流入が原因で異常事態となることがあります。
(2)異常を発見した時の処置
異常を一刻も早く発見できるよう、監視人を配置する等の措置がとられます。個々の作業者は異常の有無の発見に意識を高め、発見したときは直ちに作業主任者へ報告しなければなりません。
また、同僚の様子がおかしいと感じたときは作業を直ちに中止し、新鮮な空気が供給可能な場所に避難してから関係者に協力を求めるなど、自己の安全を確保したうえでできるだけ早く必要な措置を講じなければなりません。
(3)酸素欠乏症・硫化水素中毒の疑い
酸素欠乏症の症状は、顔面の蒼白又は紅潮、脈拍及び呼吸数の増加、息苦しさ、発汗、よろめき、めまい、頭痛などがあります。これらの症状は、風邪のときなどと似ており、発見が遅れることが多くあります。先に作業場所に入った同僚が突然よろめく等異常を認めたときは、酸素欠乏の疑いをもたなければなりません。また、硫化水素は0.3ppm程度の濃度になると卵の腐った臭気を感じますが、徐々に臭覚が麻痺することで高濃度になったことを感じなくなり意識を失うことがあります。随時濃度の測定をし、退避など必要な措置を講じなければなりません。
(4)被災者の救助
酸素欠乏症や硫化水素中毒で異常を発見した場合は直ちに救出し、救急処置を施して回復させる必要があります。傷病者を発見したら直ちに作業主任者、周りの関係者に異常の発生を知らせます。作業主任者は、関係者の指揮をとり、救助活動を実行させます。
ただし、慌てて空気呼吸器や墜落制止用器具等保護具の着用を忘れ、あるいは使用方法に誤りがあると、救助に向かった作業者までもが被災してしまいますので、まず自己の安全確保が第一です。
また、異常時の対処方法については定期的に教育訓練を実施しておくことが大切です。
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