【第2章】第2節 伝達力の向上
第2節 伝達力の向上
「これやっといて」から生まれる上司と部下のコミュニケーションのズレを埋めるには。
――――――――以下読んで意見交換をしてみませんか――――――――
上司「これちょっと会議用に書類コピーしておいて」
部下「わかりましたー」
部下「はい、コピーをしておきました(とりあえず印刷したものをドサッ)」
上司「ありがとう…。(ほんとは会議用なんで、クリップ止めて、すぐ配れるようにして渡してほしかったんだけどな。)」
何気ない一言の指示をめぐるやりとりですが、こういうちょっとしたズレというのはいろいろあるのかなと思います。
上司からすれば、「会議用にコピー」ということから、「配布すること」などを前提に指示をしているわけです。しかし、部下としてはそのまま言葉の通り「コピーをしておく」ことをやっておいたということになります。
これはなかなかどっちが悪いと言いにくい現象ともいえると思います。
これを少し整理すると、
- 上司サイドとしては「隠れた意図(前提)」はいちいち説明せず「○○をしてほしい」という行動の指示をした
- 部下サイドとしては「○○をしてほしい」という行動をそのままやり「隠れた意図(前提)」は意識しなかった
ということになります。
たぶん上司としては「そんなこといちいち説明しなくても察してくれよ」と思うでしょうし、部下としては「だったら、それを先に言ってよ」的な気持ちになると思います。
これらをリーダーシップ的な視点からみると、実はどちらサイドにもやれることはでてくるのかなと思います。
まず上司の視点からいくと、察してほしいということは理解しつつ、「何が目的か?」ということや「意図や理由」を少しだけ言語化してみる意識をもってもいいかもしれません。
自分にとってはある意味「自明」でも、新人にとってそれをすべて理解するということはどうしても難しいです。
やってほしい「行動だけ」を示すのではなく、「なぜ」という理由もそえてみましょう。そうすることで、部下も「だったら、こういう準備をしておこう」というかんじで、「自分で考える癖」をつけられるかもしれません。
次に部下の視点からいくと、言われた行動の指示をやるというのは最低限やるとして、その背後にある「隠れた意図はなにか」も一緒に考えてみる癖をつけてみるとよいでしょう。
「この資料はなんのために使うのか?」、「上司はどういう状況をつくりたいと思っているのか?」という、ある種の「共通のゴール」を探す癖をつけておくということです。
こうしておくと「単に言われたことだけをやる」のではなく、「その先にある目的を意識して、ちょっとしたお手伝い」ができる可能性が高まります。
最初はわからなかったら聞いてみるのも大事だと思います。「これ配布するならクリップで止めておきますか?」など、聞いてみて、反応を見つつ、「達成したいことはなにか」を探っていくと、常に先に動くことができるようになると思います。
今日はコミュニケーションのズレについて書きました。
リーダーシップや主体性の問題は、その個人の問題というだけでなく、「相互の関係の中でたち現れるズレ」によって引き起こされることも多いです。なので単純に「上司が悪い」「部下が悪い」ということに回収されないことが多いのですね。
現在起こっている状況をちょっと俯瞰してみて、お互いが歩み寄れるとよいですね。
(立教大学 中原 淳教授「Nakahara-Lab」より引用)
伝達力の向上は「5W1H」という手法の活用で劇的に高まります。
これは「具体性」がこのような問題を解決してくれるというヒントでもあります。
今回のテーマはあくまでも職長目線で考えていただきたいので、「意図や理由」を言語化する、つまりあと一言、二言あれば双方が気持ち良く仕事ができることになると思います。まずは自分から意識してみましょう。
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